新年度になって数日が過ぎたある日、私1人でふらりと義実家に行ってみた。
週末を使って長宗我部と訪れるのは長宗我部にとって酷だし、時間の無駄にも感じたからだ。
その日私が訪れた義実家は既に他人のものだった。
そこには長宗我部が恐れていた光景があった。
私達が何も知らない間に彼らはいなくなり、表札は剥がされ、ポストにはガムテープが貼ってあった。
私達がいつも駐車していた場所には新しい所有者のポルシェが停まっていた。
正直、嫁の私でさえ見ていてツライ光景だった。
そして、想像が確信へと変わる。
義母が私達に引越そうかと思うと話した時には既に売却が決まっていた。
むしろ売却済みであったことが。
だから義母は『仕方がない』や『わかって』を何度も言っていたのだ。
ちなみに義兄は引越しの為に仕事を早期退職しているのだが、その後、仕事がどうなったかも知らない。
その義兄からは引越しのその日まで長宗我部についぞ電話の一つもなかった。
あれから3ヶ月程経ったが、未だ義兄や義母からの連絡はない。
彼らがどこに住んでいるかも知らない。
唯一知っているのは義兄の次男の進学先だけだ。
ある意味、お受験で一家離散。
そして、この引越しの真の目的は実家売却資金を義兄の長男、次男への学費に充当させることである。
義兄夫婦はこの実家売却により資産はなくなる。
これはある種、教育費破産である。
かつて新聞などで読んでいた事がこんな身近でおこるとは。
また、この一連のお家騒動で長宗我部が幼い頃から感じていた家族からの疎外感も裏付けされることとなった。
やはり自分は家族にとってその程度の存在だったのか…と。
そして、これは自分だけに限らず、自分の息子である殿もまた自分同様の扱いを受けていることにも傷ついている。
嫁の私としては、正直何が起きているのかいまだに実感がない。
今も長宗我部は深い悲しみと落胆の中にいる。
完