NHK「ためしてガッテン」:2011年2月9日放送より




「いつまでもイキイキ元気で暮らしたい!」



そんな皆さんの願いに応えるべく
今回スポットを当てたのは、
日頃何気なく行っている「噛(か)む」という行為。


「食べものを細かくして消化を助ける」だけだと
思ったら大間違い!


噛めなかった人が噛めるようになると、
驚くべきうれしい変化が起こることがわかってきました。



なんと、
「1年間歩けなかった人が
歩けるようになるまで回復した!」
という報告まであるのです。




その理由のひとつが、
噛むことが脳に与える想像以上の効果。



噛むことの意外な効果から、
知られざる入れ歯の効能まで!



噛んで食べることのすばらしさを
たっぷりとお伝えします。







★奇跡の噛(か)むバック物語★


「歩けなかった人が・・・・
噛めるようになると・・・
庭仕事をするほど元気になった」




「ほぼ寝たきりだった人が・・・
噛めるようになると・・・
散歩ができるほど元気になった」




全国で、同様の報告が相次いでいます。



いったいなぜ
こんな信じ難いことが起こりうるのでしょうか。




もちろん口から食べることで
適切に栄養摂取ができるようになったことは
大きな要因だと考えられます。



しかし、それ以上に、
噛むことが脳にもたらす影響が注目され、
多くの研究が行われているのです。






★歯と脳のふか~い関係★


「噛(か)むこと」と「脳」の深い関係。



そのカギを握るのが、
歯の根っこにある「歯根膜」(しこんまく)という組織です。



歯を守るクッションの役割をするとともに、
歯にかかる力を精密に感知する
優秀なセンサーでもあります。



口の中にはたくさんのセンサーが存在しますが、
噛むときに非常に重要な役割を果たすのが歯根膜です。




歯根膜のセンサーにある神経は、脳神経の中でも最も太い
三叉(さんさ)神経につながっています。



噛むことによる歯根膜への刺激は、脳の中枢に送られ、
脳の中の「運動」や「感覚」をつかさどる部分や
「記憶」や「思考」、そして「意欲」に関係する部分まで
活性化させることがわかってきました。




ほぼ寝たきりだった人が、
歩けるまでに回復することがあるのも、
噛むことで脳の広い範囲が活性化されることが
関係していると考えられています。







★歯は姿勢・バランスにも影響★


入れ歯を「入れた時」と「外した時」で違いがあるのか、
総入れ歯の女性に協力していただいて実験を行いました。




すると、入れ歯を外しただけで、
力が入りにくくなるだけではなく、
体のバランスを崩しやすくなることがわかりました。




なぜこのようなことが起こるのか。




実は、私たちが姿勢を保つのに重要なのが、
上あごに対する下あごの位置だったんです。




入れ歯を入れていないと、
噛(か)み合わせられないために下あご位置が定まらず
身体のバランスもフラフラしてしまうんです。




一方、きちんと合った入れ歯を入れると
アゴの位置が定まり、
バランスを取りやすくなると考えられています。



身体のバランスを保つためにも
歯は重要な役割を果たしていたのです。




試しにこんな実験を行いました。



2,30代の男女にプールに集まってもらい、
足に浮輪をつけて、うつぶせの状態で
プカプカ浮いてもらったところ・・・

下アゴの位置を右にずらして噛むと
体全体が右に動くという
興味深い現象が起こりました。




左にずらして噛んだときは、体は左側へ・・・。



興味のある方は、プールなどでぜひお試しを!








★少しでもたくさん噛(か)みたいアナタヘ!★


「噛むこと」には、集中力を高めたり、
だ液の分泌量をアップしたり、食べ過ぎを防いだりと、
若く健康な人にとっても、うれしい効果が満載。



でも、意識してたくさん噛むのは難儀なもの。
そこで!



自然と噛む回数が増えちゃうコツを探しました。




それは・・・
食べるときに、一度に口に入れる量を少なくすること。




ためしてガッテンが行った実験では、
同じ量のカレーライスを食べるときに
使うスプーンを大さじから小さじに変えると
一皿あたりの噛む回数が、1,5倍以上に増えました。




一口の量を少なくしても、一口あたりの噛む回数は
それほど変わりませんでしたが、
スプーンを口に運ぶ回数が大幅に増えたため、
一食あたりの噛む回数も1.5倍になったのです







★今回のお役立ち情報★


入れ歯に関するQ&A



Q 1本でも歯が抜けたら入れ歯を入れるべき?


一本でも歯が抜けると、周囲の歯が倒れてきたり、
反対側の歯が伸びてきたりするなど、
他の歯にも影響を与えてしまう可能性があります。

できるだけ長く噛(か)む機能を維持するためにも
原則的には1本でも入れ歯を入れることが望ましいとされています。





Q 入れ歯が合わないのだけど・・・


入れ歯作りには根気が必要です。

総入れ歯を作る際には、
少なくとも3~4回の調整が必要だと言われています。

また新しい入れ歯に慣れるまでにも時間がかかります。

最初は軟らかい食べ物で訓練するなど、
少しずつ慣らしていくことが重要です。





Q 入れ歯を入れられない場合は?

口の中をキレイにしたり、
歯茎を刺激するだけでも脳への刺激という意味で、
大変効果があります。

たとえ口から食べることができなくても、
口の中のケアを行ってください。






Q 入れ歯でも噛むことによる健康効果を得られるの?


歯が抜けると、
脳を刺激する役目をしていた歯根膜もなくなってしまいます。

しかし、きちんと入れ歯を入れて噛み続けることで、
口の中の粘膜など他の部分のセンサーが
歯根膜の代用として働くことがわかっています。

健康のためにも、自分に合う入れ歯を入れて、
楽しい食生活を送りましょう。






Q 入れ歯の手入れについて教えて。


毎食後に入れ歯を外してお手入れをすることをお勧めします。

入れ歯に水をかけながら、歯ブラシや入れ歯専用ブラシを使って
食べかすをきれいに洗い流してください。

このとき、入れ歯専用の歯磨き粉を使っても構いません。

また、入れ歯洗浄剤は、
きちんと歯ブラシで食べかすを取り除いてから使用してください。