すごく久しぶりにアップします。
ウルトラマンで特別支援教育をというお話です。
クリスマスのエリー」『ウルトラマンマックス』第26話
先ずはストーリーから。押さえておきたいのが今回の主人公エリーはアンドロイドであること。
街はクリスマス。人々が浮かれているなか、理解できない顔のエリー。この日の人間の感情を説明しようとする隊員コバであったが、エリーの思考にはいまひとつうまく伝わらない。なぜ人間はクリスマスというだけでそんなに嬉しい気持ちになるのだろう…と首を傾げるばかりである。
そこへ現れた古理博士。ひょんなことから博士についていく。博士は、12年に一度現れるという神話の幻獣ユニジン捕獲計画中。幻の怪獣なので、この怪獣の話をする博士を世間はペテン師と見ています。
博士についていくことで、エリーと博士の不思議な時間が始まります。犯罪防止プログラムの働くエリーは博士が人のものを盗もうとするとやめさせるなど、コメディアン犬塚弘扮する古理博士の演技が光り、この場面が実にうまいのです。エリーに叱られる場面が多い博士は、その都度エリーに
「ロボットの娘さん、今の気持ちは?」と自分の感情を確認させる。エリーは過去のデータと照らし合わせてふさわしい感情を答えていく。時には「その感情が困ったことになるんだよ。」というようなことを博士はインプットして行く。
やがてユニジンが現れ、捕獲に成功するが博士は逃がしてやります。立ち去った後にはイイギリの赤い実が残されていた。これは博士の少年時代、クリスマスツリーに赤い実を飾ろうと探しに出た時に初めてユニジンに出会ったのです。ユニジンはそのことをおぼえていて、今回イイギリの実を持て来ていたのです。ユニジンが置いて行ったイイギリを見てじんわりとした喜びが古理博士に湧きおこります。そして、エリーに最後の問いかけをします。「ロボットのお嬢さん、今の気持ちは?」
「ウ・レ・シ・イ? 博士が嬉しいから、私もウレシイ」と自分以外の存在の感情を始めてエリーが理解をするのです。クリスマスは誰かに喜びを、だから人々は嬉しい気持ちになるのだと気づく。
かなり、乱暴な粗筋なので、このお話の良さがどこまで伝わったか分かりませんが、相手の感情が理解できない者に対して、感情を理解させるためには、
「相手の気持ちになってみろ。」と叱る教師が、いかに馬鹿な叱り方をしているのか分かっていただけますか。「相手の気持ちを理解できない」というのがアスペ達の障害なのですから、「空を飛んでみろ」と言っているようなものなのです。アスペの子ども達は相手の気持ちを理解するのは困難ですが、当然自分の気持ちは表します。従って、その気持ちを整理してやることが大切なのです。自分の気持ちなら振り返れますから。その都度振り返り、感情の情報をデータベース化することで、相手の気持ちを推し量るようになる。古理博士が嬉しいと理解し、自分も嬉しくなったというかなり高度な感情の動きをエリーは情報処理できるようになりました。
実際、私が中学校に勤務していた時に接していたアスペの生徒に対してこの指導をしたことがあります。丁寧に1年間続けました。結局卒業の時期にも成果は出ませんでした。しかし卒業後、この取り組みの成果を確認できる場面があったのです。自分の成長を確認し涙する母に、「そうだ、泣くのは悲しい時だけではない。」と思い出し、喜んでくれていることを彼は理解したのです。
この脚本を書いた太田愛さんはすごい。大田愛さんはウルトラマンマックスを足がかりに『相棒』のライターになられました。ウルトラシリーズで、彼女のシナリオはどれをとっても珠玉です。また、ウルトラに戻ってきていただきたいライターです。