夕陽が差し込む図書室。

1人の生徒が棚にもたれて
読書をしている。





「…………」



彼が読んでいる本…。

タイトルらしきモノは無く
なんの飾りもない本。


描かれているのは、
名も無き国が
悪しき力によって滅びゆく宿命に必死に抗う様子が描かれていた。


「…よくあるSF小説か」


神子が祈りを始めた、という一節まで読み終えると

本を元の棚へと戻した。



「…惹かれたのは気のせいかな」


夕日が沈みきった頃
彼は学校を後にした。



…………



学生寮へと戻った彼は
さっき読んだ本の一文を
ふと思い出す。


「……混沌を打ち払う救世主」

名も無き救世主がイメージが掴めない。

挿絵もない文字だけの本。

ベッドに寝転んで目を閉じた。

1人の少女が祈祷している姿をイメージする。


召喚の儀式なイメージだろう。


「……混沌を打ち払う救世主」



…………


「あなたの力が必要なのです」





「……トオル」


不意に呼ばれた名前に身体を起こす。


しかし誰の気配も感じない。


確かに呼ばれた名前。


部屋の外かと思い扉を開く。

と同時に暗い部屋に眩い光が差し込んできた。


「…え」


驚く間もないまま、まるで重力が無くなったような錯覚を覚える。


「な、なんだ、これ!!」


……それはどこかに落ちていくような感覚だった。