@空港

暁闇。前泊したホテルからシャトルバスに乗り空港チェックインカウンターへ行くとすでに風麻呂夫婦が佇んてゐた。昨夜は早めに店を閉め娘婿の車で送ってもらって22:30に着いたと謂ふ。空港はあまりにも冷房が効いてて凍えたので 外のバス乗り場のベンチで寝たよと笑う。いや風麻呂よ、お前はそれでいいが奥さんが可哀想だら

う。で、ふと見やればこの夫妻 荷物がとてつもなく多い。お土産さ! 暇だったから山のように羊羹や酒を買ったんだ と胸を張る。いや買いすぎだってば..。LCCだから預け荷物は別料金なんだぞ どうせ覚えちゃあゐないんだらうが

 

@機内

乗客の多さに吃驚。シマへの観光客急増はこの格安航空会社のお陰と聞いてゐたがおそらく本当だらう(従前の移動コストは高すぎたものね)

座席で大江健三郎自選短編を開く。『セヴンティーン』。自らの思春期と重ね合わせたりしつつ途中まで読み進める

後方より(おそらくは)風麻呂の高鼾が聞こえてきた。もちろん赤の他人の振りをする。席が離れてゐてよかった

 

@レンタカー屋

予約してゐた空港近くのレンタカー屋さんへ

で、これがまた吃驚するくらい小さな店舗(というより掘っ立て小屋)。最近まで牛小屋だったんぢゃないか..

で、これまた吃驚するほどオンボロの車を渡された。

鍵穴にキーを差し込んでドアを開けるなんて何時以来だらう..。ナビがついてゐるが全く使い物にならないし。「とんでもねぇ車だナぁ!」早速 風麻呂が文句を謂い「ごめんなさいねあせる」とAが謝る

そやけどしかし。考えてみれば何もしない風麻呂に代わってAがレンタカーを予約しお金も払ったんだから文句を謂われる筋合いは毫も無いのだ

 

@イイミレ岬

好天なので海を眺め広いサトウキビ畑を抜けて空港近くの景勝地「イイミレ岬」へ

旅程については 風麻呂と何度かj打ち合わせたが つねに雑談に終始、結局 気の向くままの旅になってしまったのだ

イイミレ岬で。太平洋を観望し若い観光客のカップルに頼んで記念写真を撮ってもらい白浜に降りて浅瀬の熱帯魚を眺めた。磯人(いしゃーんちゅ)が銛を以て魚を衝きにゆくのを見送る

やっぱシマの海の透明度は高い。底の白砂までくっきり見える。燕さん(風麻呂の奥さん)が「ここの水はしょっぱいの?」と訊くので「もちろん 海だからね」と云うと、実際に掬って味見をしてゐた。へぇ彼女は海が珍しいのか..

 

@衣玖爾集落

このレンタカー、ドアの鍵穴が詰まっているのか? キーが差し込みにくい

ブレーキの異音を気にしつつ海岸線をはしり 風麻呂の親戚を尋ねる

突然の訪問に親戚が吃驚してゐた(アポなしかよ..不在だったらどーすんだよ)

 

風麻呂の母は、御年99歳である(長女と共に東京在住)。オラの記憶が正しければ、彼女は18歳の時 この亜熱帯の集落より極寒の満洲へ渡った。が、すぐに敗戦、激動の渦中で荒波に揉まれながら 8人の子を産み育て、1980年日本へ戻ってきたのだ。

いまは 彼女も彼女の子供たちも全員関東に住んでゐるので、今回の風麻呂の帰島は、一家の代表として先祖の供養&昔お世話になった方々への挨拶をすると云ふ大事な使命も帯びてゐるのだ

それなのに 風麻呂はいつもの軽いノリだよ..(お母さんに怒られるゾ!)

 

線香を持って海野家代々のお墓へ。風麻呂夫妻は「商売繁盛・一家健康」を一心に唱えてゐる おいおい神社と混同してねーか..

親戚のおじさんから 今朝 山で採ってきたというグアバとドラゴンフルーツを頂戴して 出発する

 

@昼食(地元料理)

観光パンフレットに紹介されてゐる有名店へ

席につくやいなや風麻呂夫妻、店のインテリアやサービスや味付けやボリューム等々について あーだこーだと批評を始める。ま、飲食店を経営してゐるので一種の職業病であらう..

出てきた料理に舌鼓を打ちながらも あーだこーだ続けてゐる。外食&論評がこの夫妻の楽しみでもあるやうだ

「お義母さんが生前つくってくれた方が美味しかったな」とAが呟く。実はオラもそう思つた。(東日本からの?)観光客の好みに合わせて味付けを濃くしてゐるのかな?

風麻呂の誘いに負けてビールを吞んでしまったので、運転をAに換わる

ちなみに風麻呂は免許更新を失念してゐたため無免許、燕さんも免許を持ってゐない

 

@すモールⅢ(地元のHC)

つぎの予定は10年前に夭逝した同級生M世の弔問だったが、約束の時刻まで時間があったので、地元のホームセンターで調整

燕さん、園芸エリア(亜熱帯植物 特に蘇鉄)に異様な興味を示す。福建人だし ちっとも珍しくない筈なのだが。「『蘇鉄(中国語は"鉄樹")』は高価だよ!」と興奮してゐる

その間 Aは駐車の練習

店内に入ると風麻呂夫妻、例によって(飲食店を経営しているから一種の職業病だらう)やれ野菜や果物の種類が少ないだの肉が高すぎるだの文句を謂いつつ、地元のお土産を大量に買い込む。いや買いすぎだって..

コメ売り場。潤沢にコメが並んでゐた。妹に訊いたらシマでコメ問題はまったく発生しなかったらしい。「欲しけりゃ送ってあげようか」とまで言われた。島人はのんびりしてゐるから買占め行動が無いのかね

 

@M世弔問

会うのは40年ぶりのアクセロと待ち合わせし M世の長男の家へ

アクセロ..体積が倍になってゐた

アクセロとM世は双子の兄妹。

この双子、オラにとっては幼馴染・風麻呂にとってはチームメイトだったのだ

お願い

 

ホテルへの帰途、アクセロが東シナ海と太平洋を一望できる場所へ案内してくれた

シマの方が本州より涼しい(と感じる。海風の恵みか)

 

@リゾートホテル

一日目は風麻呂夫妻につきあってホテルに泊まることにしたのだ(二日目三日目は実家泊予定)。故郷でホテルに泊まるのは初めてだ

別棟の簡易コテージ式なのだが、風麻呂夫妻は早速「部屋の設備がチャっちい。その割に高すぎ」などと文句を謂ってゐる。ま、この夫妻 基本的には人生を愉しめるタイプで、文句を謂うのも楽しみの一つみたいだと判ってきたので、聴かず受け流す

夕食は地元料理。これは美味かった。九月九日的酒。風麻呂が黒糖焼酎のボトルを注文、二人して酔っ払う。ヤドカリは美味いだの高級食材だのと議論。飲食店を経営してゐるから❓職業病?オラぁヤドカリを喰おうなんて考えたこともねーよ..。ちなみにヤドカリは中国語で「蝦怪」と云うらしい

食事後、夫婦二組でビーチを軽く散歩。神々がさんんざめく星々を観る

星ってこんなに多いんだよな。忘れてゐたよ

 

部屋の網戸に巨きな蟲が引っ付いておりヤモリが高らかに鳴いてゐた

嗚呼この集落にはまゆみさんの実家があるんだよなぁと思いながら眠りに就く

隣の部屋から風麻呂の高いびきが響いてくる

重陽節か

 

さぁテ

今日一日の生命に感謝

 

よい一日をキラキラ

爆  笑