運転指導において、「悪い指導」とは何か。そしてその改善策とは何か。

細かいところまで挙げるとキリがないですが、代表的なものだけでも整理してみたいと思います。


ただ道案内するだけ

(基本無言を貫くor雑談しかしない …も含む)

勘の良い生徒さんは運転することで勝手に経験値はついていきますが、そうでない生徒さんにとっては「ただ車を動かしているだけ」となってしまい、何の効果もありません。

【改善策】

・要所要所で良い点を見つけ、褒める

(生徒さんに「この動きはOKなんだ」と自覚させる)

・複雑な状況下にあるとき、生徒さんがミスをした時はアドバイスを忘れずに行う

(生徒さんに「このケースではこの動きをするのか」と自覚させる)

・少し理解度のある生徒さんには質問をしてみる

(ただし、質問のしすぎは「尋問」に感じるので注意)


失敗したら感情任せに叱るだけ

もはや何の分野でも一般的な話ですが、ただ生徒さんが萎縮するだけです。

中には反骨精神でこの方法で伸びる方もいらっしゃるので一概には言えませんが、現実的ではありません。

【改善策】

・感情は抑え、事実を淡々と伝える

(ただ、危険時に一言強めの注意を与えるのは致し方ない場面もあります。その場合は後程落ち着いた環境で停車させ、イラスト等を用いてアドバイスを行います。そうすると指導する側もクールダウン出来ます)

・生徒さんが理解していない場合も怒るのではなく、表現を変えてみる

(イラストに変えてみる、簡単な表現に切り替えるなど)

・「さっき言ったよね?」「言わなかったっけ」「何回も言うけど」は不要なフレーズである。自身の説明が足りないということなので、他の表現や手法でアドバイスしてみる。


教本通りの説明しかできない

教本に書いてあるような説明しかできないと、事前に色々予習した生徒さんにとっては物足りないものとなってしまいます。また、生徒さんも決して安くない金額を支払っているので、少しでも「教本プラスα」の知識を身につけていただき、費用対効果を高めさせてあげたいです。

【改善策】

・指導する側も勉強や運転経験が必要。基本的な道路交通法や運転操作は理解していることは大前提で、車両間コミュニケーションやモラル、複雑な誘導などの応用知識がないと説明の幅が広がっていかない。


●やたら補助ブレーキばかり使用する

→危険を回避することは必要ですが、使う回数が多すぎると生徒さんの自主性を妨げ、不快になります。

【改善策】

・生徒さんよりも一歩先を見据え、周囲や生徒さんの動作などの危険を先読みし、口頭補助で済むところはなるべく口頭で済ませる。

・やむを得ず補助ブレーキを使用するときは「すみませんが」などのワンクッションを置く。また、強いブレーキにならないように配慮する。

・補助ブレーキばかり使用しなければならないということは、指導する側も先読み不足であることが多いです。


生徒さんに全く寄り添っていない、専門用語が並ぶ小難しい説明ばかりする

生徒さんはとりあえず「はい」とは言うものの、実態は「置いてけぼり」です。

【改善策】

・自分が分かっていることは相手も分かっているだろうと決めつけないこと。自分が分かっていることを小学生でも理解してもらえるようにするには勉強が必要。

・都度理解度確認をする。生徒さんがつまづいているようなら何度も立ち止まって説明をする。


指導する側の独自の理論を押し付ける

中には「こうしないとダメだ。さもないと」と強要するインストラクターも存在する。

【改善策】

・自身のこれまでの経験が最善策とは限らない。道路事情は千差万別なので、自身の経験をベースに柔軟な対応が必要とされる。


生徒さんの運転操作や発言を笑う、バカにする

生徒さん自身は正しいと思って動作あるいは発言をしているのにそれを見下すような動きを取ると生徒さんも萎縮するし、不快な気持ちになります。

【改善策】

・後ほど落ち着いた環境下でもいいので、生徒さんにその操作(発言をした理由をまず聞いてみる。一旦それを受け入れた上で、改善が必要であればポイントを押さえて指導する。


「俺ならこうする(orこうしない)」とマウントを取る

どちらかというと言い方の問題な気もしますが、聞いている生徒さんはいい気分ではありません。

【改善策】

・とりあえず「主観目線」ではなく「客観的な」アドバイス、言い方とする。また、「こうするともっと良くなりますよ」などと表現を変えてみる。こうした工夫で同じ内容でも受け手側の印象は大きく変わる。


「運転向いてないね」「運転やめたら」などと言う

生徒さんの尊厳を傷つける発言です。「運転がおぼつかない状態」を「運転できるようにする」ようにするのがインストラクターの使命の1つなのでこの発言が出ること自体が指導に向いていない可能性があります。

【改善策】

・こういった発言を慎むに尽きます。このような状態の方をどうやったら上手くさせることができるのか?を考え、色々な手法をトライし、指導法を確立させるには経験を積んだり、勉強を重ねることが必要です。



色々ありますが、大半は指導する側のひと工夫で「良い指導」へとシフトさせることができます。

この工夫でさえも面倒だと思うのであれば、残念ながら指導には向いていないのかもしれません。

逆にこういった工夫を取り入れていけば、少なくとも悪い評価はほとんど無くなるはずです。