「升田幸三物語」 第98話 ② | クオの別世界

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十段戦でまた負ける


東公平著「升田幸三物語」(日本将棋連盟発行)より全引用


 昭和39年度の升田の総成績は28勝16敗である。

 前に記したように、夏の王位戦は挑戦者決定戦で二上八段に不戦敗。王将戦も、リーグ戦5勝2敗で加藤博二八段と同点決勝になったが、あっさり敗退(消費わずかに33分)で、やる気がなかった。

 28勝16敗という、記録上の数字がそのまま升田の実力を示してはいない。

 さて、第3期十段戦リーグは、升田のほか二上、熊谷、大野、加藤一二三の各八段、長谷部七段の6人で争われ、升田は8勝2敗で、3期連続して大山十段・名人と

7番勝負を行った。

 第1期、第2期ともに升田は3勝4敗。いわば“フルセット”の末に敗れているのだが、勝ち負けの順番が全く同じ。つまり升田から見て●○●●○○●という、イヤな相似形になっていた。

運命的なものを感じるが、第3期も、4局までで●○●

●になってしまった。


 その第1局は、大山―升田戦には珍しい「相横歩取り」の急戦でスタートし、一段落して双方中住居の玉型で戦ったが、102手で大山の勝ち。升田は10時間のうち8時間59分を使って頑張っている。

 第2局は升田後手で中飛車。これは升田会心の勝利である。参考図が中盤の一局面。

 △3四歩に対し、大山は1時間15分も考えて▲同金と取ったのだが、まったく読みにない△3三桂の妙手を指されていっぺんに悪くしてしまったのだ。図では我慢して▲3六金と引く一手だった。

 しかし大山もよく粘り、138手。8時間を使った。升田の消費はわずか4時間12分である。

 升田は自戦記に、「手数は長びいたが、久しぶりにポカのない快勝。こういう勝ち方は体のために非常によろしい」と書いている。

 第3局は升田先番で、▲7六歩△3四歩に▲6六歩。大山、これに対し△3五歩。相振り飛車が大嫌いな大山にしては珍しい指し方。

 以下、なぐり合いのような大乱戦。入玉模様でもないのに188手。やや不利な升田が珍しく最後まで粘り抜いたのである。「十段」のタイトルへの執念が見られた。

 第4局が升田、痛恨の逆転負け。大山の猛攻を巧妙にしのぎ切った直後に「と金攻め」をはかった一手が敗着になった。

 こういう負け方は「体によろしくない」ばかりか、1勝3敗の「負けパターン」が3年連続で出てしまった。第5局は勝ったが、第6局が○にならず、升田は敗退した。



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(続く)