勇次と美紀がこれほどまでに仲がいいのには訳があった。
「勇次の父親は会社の出張で福島県へ行き大震災に遭遇して死んでしまったのだ。母親はショックのあまりに幼い妹を連れて実家のある東京に帰ったきり戻ってこない。美紀は福島県出身であるが、あの震災で家族全員を失った。広島の親類を頼ってきたが、やはり親類は親類である。居心地はよくない」
 勇次と美紀は必死の思いで高校生活を送っているのだ。
「一日一日を過ごして行くのが簡単ではないのだ」
 まだ知り合って間がない二人だが、似たような境遇からあっという間に仲良くなったのだ。
「美紀がいるから生きてゆける」
「私も勇次と会っている時が一番幸せ」
 こう言い合ってふたりは広島の街で生きていた。