『口に関するアンケート』
作:背筋
ポプラ社
房総の山奥にひっそりとたたずむ小さな霊園は、
心霊スポットとして有名だった。
特に、霊園ができる
前から伐られずに残っている1本の古木は、
「呪われた木」と呼ばれ、
その下には埋葬されている
人の霊が出るという。
軽い気持ちで肝試しに
訪れた、ある大学生男女のグループもまた、
忌まわしい恐怖を体験することに
なるのだった...。
複数のテキストや、素材をより合わせ、
曖昧かつ、ゴツゴツとした輪郭を浮き彫りにする
デビュー作で、
モキュメンタリー・ホラー流行の立役者の
1人なった作者は、
恐怖の描き方と、メタな技巧や
仕掛けにきわめて意識的だ。
3作目となる本書は、
その筆頭かもしれない。
何しろ、当初Web掲載予定だった
50枚足らずの短編を、文庫本より
小さいサイズの豆本として刊行。
題名と表紙の意味不明な気持ち悪さに、
印刷物ならではな本文への仕掛けと、
メモ帳のような体裁の中に、趣向を凝らしている。
内容的にも、複数の語り = 視点の錯綜と、
同時に刊行された2作目の長編
「稀れた聖地巡礼について」と同様、
心理描写による物語思考が
短い枚数に凝縮された異色作だ...。
備考:この内容は、
2025-6-27
発行:宝島社
「このホラーがすごい!
2025版」
より紹介しました。