長尾さんは、学生だった18歳のころ、
京都の嵐山に住んでいた。
その日は友達と、
「いまから、自転車で
新京極まで行こう」
と言って、深夜に遊びに出かけた。
嵐山から、京都の中心部へ向かう道中には、
急な細い坂道があり、
長尾さんが前、
友達が、後ろの、
縦並びになって下っていく。
誰もいない深夜の坂道。
夜風を浴びながら、自転車のスピードは
ぐんぐん上がっていく。
すると、先のほうの歩道に、白い服を
着た女の人が見えた。
どんどん距離が縮まって、
こんなところで、何をしているのかな?
と見ていると、
目が合って、
すれ違いざまに
ニヤッと笑った瞬間、
パッと、手を出してきた。
「危ない~!」
長尾さんは、瞬時に体を横にして、
何とか、よけることができたが、
スピードも乗っているため、
危うく、大転倒するところだった。
坂を下りきってから、後ろを走っていた
友達に声をかけた。
「いまの人、危なかったよね?」
友達は、不思議そうに答えた。
「誰も、いなかったよ」
備考:この内容は、
2024-7-26
発行:二見書房
著者:松原タニシ
「怖い怪談」
より紹介しました。
(読後感想)
さあ、読者の皆さん、
いかがでしたか?
「坂道グループのみなさん」