【1兆度の火の玉を吐いたら?】
実際に、ゼットンが1兆度の火の玉を
発射したら、どうなるのだろうか?
1個あたり、太陽の460兆倍のエネルギーを
持つ火の玉である。
こんなモノが、地表で
放出されたら、もう大変。地球は一瞬で
蒸発し、太陽系の星々も順次消滅する。
被害は、これにとどまらない。高温の
物体は光を放つが、さそり座のアンタレス
などは、3千度で赤い光、太陽は6千度で黄色い光、
シリウスなどは、1万度で
青白い光...という具合に、温度が上がると、
光の波長は短くなっていく。
10万度なら、紫外線、300万度から1億度で、X線、
それを超えると放射線の1つ、γ(ガンマ)線が
放たれるのだ。
生物は、体重1kgあたり、300Jの
γ線を浴びると即〇する。
γ線は、光と同じ速度で拡がりつつ
弱くなっていくが、ゼットンの火の玉から
鼻タレた
γ線が、この強度に薄まるのは、
90光年彼方である。
つまり、ゼットンが、1兆度の火の玉を2発吐くと、
全天に輝く星々のうち、
90光年以内にある☆の惑星に住む人々が
ガタガタと文句を言う暇もなく、
バタバタと倒れていく。
オリオン座のペテルギウス人や
さそり座のアンタレス人は難を逃れるが、
彦星人は16年後、織姫人は25年後に即〇し、
北斗七星人は、7個のうち5個までの住人が
90年以内に全滅する。
とにかく、温度はエネルギーと密接に
結びついているので、無責任に大きな
数字を登場させると大変なことになる。
ザンボラーは、10万年後の炎で山火事を起こし、
ゼットンの1兆度の火の玉は、科学特捜隊本部の
ガラス窓を割った。が、想像を
絶する超高温でそんなことをするのは、
ダイヤモンド原石を、漬物石にしたり、
コンピューターを、
花瓶置きにしたりするようなものだ。
山火事を起こしたいのなら、木材の
発火点 250度前後でよいし、窓ガラスを
割りたいのなら、石をぶつければいい。
適材適所、
これが、本稿の教訓である...。
おわり...。
備考:この内容は、
2018-11-30
発行:KDOKAWA
著者:柳田理科雄
「空想科学読本 1」
より紹介しました。
画像を、適材適所に
配置しました点、
お詫びします。