私は、学校には真面目に行くんです。
出席率はよく、ちゃんと授業を聞いて
いるようなんだけど、勉強は
できないというやつが、いるでしょう?
そのタイプです。
先生の話を聞いているようで、
聞いていないんあだな。こんなことを
やったって、将来、役に立たないんだろうな?とか。
先回りしちゃうのね。
先生に
呼ばれると、「学校に行って、分数とか、
微分積分なんか、やったって、いつ役に立つのかな?」
なんて屁理屈ばっかり
言っていたんです。
だから先生も、こいつに
説教したって、返ってくる言葉は、
いつもひねくれているからと、あんまり私に
熱心じゃない。私も先生に熱心じゃない。
でも、授業はサボらない、真面目に
行く。それでも、成績はあまりよくない。
ずっと、中の上ぐらいでした。
それで、ふだんは、大人が考えそうな
ことを考えていた私は、人をジーッと
観察する癖があるんですね。
ついつい人をジーッと見てしまう。
だから、誤解されたり、
殴られたりしました。
なんかそういうところはありましたね。
また、当時からモノマネが
好きだった。なぜ、好きになったのか?
理由はわからないのですが、とにかく、
小学生のころかた、モノマネをしては、周りを
笑わせていました。
私が、小学校高学年になるころには、
日本もやっと、戦後の荒廃から抜け出し、
私たち田舎の農家にも、耕運機や
トラクターが出回り始めていました。
その結果、種馬だけでは儲からなくなっており、
親父も農業をやっていたんです。
酪農が中心ですが、牛を飼って、
仔牛をセリに出すと、松阪あたりに引き取られる。
鹿児島産の仔牛から松坂牛を
つくるわけです。
仔牛をセリ市に親父が連れて行くと、
セリの
大将が「3万円、はい、5万円」って、
みんなが競っているところを、
牛が
回って歩くわけです。
周りに馬喰が、全国から
集まってきますよ。血統書は、
みんなリストができているわけ、下調べを
全部して...。
それで、競る人が、パッとリストを見て、
3万円から始まる。いい牛は5万円
ぐらいから始まる。
「はい、3万円、5万円」なんて、ずっとやっている
わけですよ。
「はい、7万円、はい10万円」って、
ダーッて20万円ぐらいまで、
上がっていく
競る人がなくなると、
「20万円、はい、20万円、ないか?
はい、無いか?」って
「20万円、はい、20万円」って。それを
ずっと見ていてね。なんて
かっこいいんだろうと、子供心に思いまして、
自分は将来、一番上に立って
セリをしている人になろうって。
そして家に帰ると、「3万円、3万円」って、
ずっとやっているわけです。
縁側に立って、親父もお袋も、
「バッカじゃないのか!?」
「頭がおかしいんじゃないか!」
と、言っていました。
夜中までやっているんだから、
「3万円、3万円」って...。
なにが、魅力的なのかって、その
口調がいいわけですよ。キレが。たとえば、
選挙速報がありますね。
「鹿児島1区、●▲■$氏、自民前、当選確実」って、
淡々と言うじゃないですか。
あれも、すごく語呂がいいわけですよ、流れが。
あれをず~っと、聞いていて、
それをまた、マネしたりね。
あと、東京オリンピックの、
「さあ、最後の演目に入りました。三宅、
精神統一をはかりました!」というやつです、
ほら、重量挙げのね。
「さあ、持ち上げます!」っていう、そのアナウンサーが
言ったことを全部書いて、それを
そっくりマネてやるんです。
東京オリンピックの入場も、
「さあ、日本選手団に入場です!」
って、やるじゃないですか?
あれを、もう今は忘れちゃったけど、
アレを、全部書いて、そっくりマネして
やっていました。
だから、そういう変わり者
だったんですよ...。
備考:この内容は、
2009-7-27
発行:PHP研究所
著者:綾小路きみまろ
「有効期限のスギた亭主・
賞味期限のキレた女房」
より紹介しました。