中学1年生のとき、サイモン&ガーファンクルの
『サウンド・オブ・サイレンス』を
聴いた僕は、完全にシビれてしまった。
それまで、クラシック一本槍だった僕は、本当に
新鮮な感動を覚えた。以来、ポール・サイモンの
生き方に、僕自身の人生が
重なって見えるのだ。
デュエットで、デビューし、
ソロ活動に移り、映画作りに失敗...。
そんな時。
「たかが音楽、つでもやめられる」
と、いう彼のコメントを雑誌で見た。
どうしても、その言葉に納得できなかった僕は、
迷わず、NYへ向かった。僕の問いに彼は、
こう答えたものだ。
「音楽は、過去へ向かって
進行していくんだ。生み出すまでの瞬間が、
本当の音楽なんだよ」。
音楽を生み出す”今”に
すべての思いをこめ、僕は、いつやめても
悔いはない。と言い切るまでの彼の音楽に
対する、真摯な姿勢に心を打たれた。
ポール・サイモンの4枚目のソロアルバム
『時の流れに』が、1975年、最高峰の
グラミー賞をとった。
もちろん、僕もテレビの
前でガッツポーズ!
彼の受賞スピーチが
また奮っているのだ。
「まず、何よりも、
最初に、スティービー・ワンダーに感謝したい。
なぜならば、今年、彼はアルバムを
出さなかったからだ」。
当時、絶頂期にあった
スティービー・ワンダーを、皮肉ったような
この言葉の中に、ポール・サイモンの巧まぬ
ユーモアと、何よりも自分の位置という
ものが、よく解っていることを感じた。
彼と同様な音楽人生を、おくる僕も、自分の
位置を、はっきり認識しつつ、真剣な姿勢で
音楽をやっていきたいと思っている。
『時の流れに』の現代は、「君と別れて
だいぶたつけど、僕は今でもくびったけ」
という意味か。
僕は、ポール・サイモンに
いつまでたっても、いかれっぱなしだろう...。
備考:この内容は、
平成3-1-1
発行:PHP
より紹介しました。