「あの人と猫」...文:稲田雅子
あの人は猫が好きだった、
と聞いて「やっぱり」と思うか、
「まさか」と思うかは、ひとえに、
その人物のキャラクターに、
かかってくるだろう。
いかにも、猫とのツーショットが、
似合いそうな人もいれば、
イメージとの思いがけないギャップに
驚かされる人もいる。
いずれにしても、猫は、どんな著名人とでも対等に渡り合う、
いや、ときには、支配下にすら置くことがあるようだ。
猫とともに、いるときに
見せるその表情に、「あの人」の
隠れた素顔が見え隠れする。
この人は、猫が好きだった。
【パウル・クレー】
【思い出を伴った”抽象”...】
パウル・クレー。
抽象芸術は苦手という日本人が
少なくないなか、なぜか
クレーは別格で、人気が高い。
どこか詩情や抒情を感じさせるその
趣が、日本人の感性に訴え
かけるのだろうか?
『この星はお辞儀をさせる』
『忘れっぽい天使』などといった作品
タイトルにも、それは偲ばれる。
クレーの作品が日本で愛好されるのは、
そこに俳句に似た要素が
あるからではないか? と語るのは、
孫のアレクサンダーである。
余分なものを、削ぎ落とされた
フォルムが、エッセンスのみを残して
深い余韻を与えるところに、
私たちは、東洋的なものを感じる
のかもしれない。
もっとも、自分の
作品が「詩的」とか、「抒情的」
などと評されるのは、クレーに
とって本意ではなかったらしい。
ちなみに、作家・吉行淳之介は、
クレーの作品『砂の上の植物群』を
モチーフの同タイトルの
小説を書いている。
画家が、
あえかな描線と淡い色彩の中に
秘めた強靭なものを、作家は、
見逃さなかったのである。
「芸術家は、眼に見えるものを見え
なけらばならない」と論じた
クレーは、独自の造形的思考に
よって、純粋に絵画的な様式を
めざす実験を続け、やがて、
ヒトラーに「退廃芸術」の烙印を
押されることになる。
「私は音に色彩があるように、
色の中にも、音が潜んでいるもの
と思っています」とクレーの
作品について語ったのは作曲家・
武満徹だったが、たしかに
クレーと「音」の関係は深い。
音楽に秀でた
両親の元、7歳から
ヴァオリンを習い始めたクレーは、
音楽か芸術家か、進路を
迷ったといい、絵筆同様、終生
ヴァイオリンを手放さなかった。
妻のリリーも、ピアニストである。
夫の絵が、まだ売れなかった頃、
リリーは、ピアノを教えて生計を
立て、クレーは家事と、育児を担当。
1人息子のフェリックスが、
2歳になるまでの育児日誌
からは、その先鋭的な芸術活動
からは想像しにくい、良き
家庭人としての、彼の人となりが
伝わってくる。
さて、写真の左手奥、丸まって
寝ているのは、大きな縞柄の
猫である。猫好きだったクレーの
身近には、いつも猫がいた。
愛猫としてよく知られた
「ビムボー」は、真っ白な長毛だったから、
ビムボーでは、なさそうだ。だとすると、
トラ猫の、フリッツィーか?
画商のニーレンドルフがクレーを訪ねた時、
ピアノの上のヴァイオリンの横に
座って、緑色の瞳を光らせて、
主人をじっと見ていたという、大きな猫。
クレーが、
「その眼差しから逃げ出せはしない」と、
語った、たぶん、その猫だ。
そういえば、
盟友であったカンディンスキーが、
妻ニーナとともにクレーを
尋ねると、クレーは決まって、
猫を別室に閉じ込めたという。
猫が苦手だったニーナへの
心遣いだったと、彼女自身が記しているが、
カンディンスキーが、
クレー同様に猫好きだったことを
思うと、これは、面白いエピソード
である。
1918年の暮れ、終戦を
迎えて軍隊から帰還したクレーは、
家族とともに、遅ればせながら、
29歳の誕生日(12月18日)と
クリスマスを祝っている。
ピアニストだった
母は、グランドピアノの
向かい、父はヴァイオリンを手に、
バッハとモーツァルトの
ソナタを奏でたと、当時11歳だった
息子のフェリックスは、後に語っている。
「聴衆は自分と
(虎のように大きなフリッツィー)
だけだった」。
それは、まるで、
クレーの作品のような光景では
ないか。没後に刊行された
「クレーの日記」の中には、彼の
こんな言葉がある。
「かくてぼくは、
(想い出を伴った抽象)なのだ」。
彼の作品が、私たちの心を
揺さぶるのは、誰もが内包する
「想い出」への共鳴振動だったのか!?
激動の時代にあってなお、
クレーはその透徹した眼差しをもって、
「芸樹」を追求し続けた。
画家は、この上なき、美しい世界を生き
描いたのである...。
備考:この内容は、
2024-1-1
発行:辰巳出版
著者:稲田雅子
「猫びより」
より紹介しました。
(編集後記)
あの~、筆者は、
ビンボーなので、
その描くブログは、どれも、
パクリ・アレ~です。
きゃは!
せっかくの感動のお話が、
大無しよ!
そうですね、母は、山形で、
父が新潟の間に生まれた筆者は、
ガタガタです。
きゃは!
もっと、真面目に!
そうですね。
ベートーベンや、ショパンのことは、
わかりませんが、
弁当や、食パンのことなら、
わかるのですが、なにか?
きゃは!
ダメだ、
こりゃ!