羽生結弦さんは、平昌五輪の、約3ヶ月前に
靭帯を損傷する大きなケガをされました。
治療やリハビリのために、直前の大会を欠場して
いて、ブランクがあった上に、痛み止めを
打たないとジャンプも跳べない状態だったにも
かかわらず、勝たないと意味がないとの覚悟で
本番に望み、2位と10点以上の差をつけ、
男子シングルで66年ぶりとなる五輪2連覇を
果たしたんです。そして、優勝直後に、
「どんなオリンピックでしたか?」と尋ねてみると、
彼は、「とにかく捨てて、捨てて、捨てる
作業をしたオリンピックでした」と...。
1つは、勝つために「技」を捨てたわけです。
羽生さんは、努力を重ねて習得した4回転
ルッツや、4回転ループという大技を封印。
もう1つは、自分の日常的な「欲」を捨てたと。
友だちと遊ぶことや、大好きなゲームをやめた。
これら、数々の「幸せ」を捨てたのです。すべては、
金メダルのために。
そんな羽生さんが、
オリンピックで、最後に何をつかんだのか伺うと、
「幸せをつかみました」と。人は何かを
捨てることによって、かけがえのないものを
得られるんだなと感じました。
彼の感性と勝負感覚には
いつも勉強させてもらっています。
同じ日本人として本当に誇らしい、23歳
(2018年現在)にして、すでに男の中の男です...。
また、スピードスケートで金メダルと
銀メダルを獲得した小平奈緒さんは、平昌五輪に
出場した選手の中で、一番日本人らしい
アスリートだと思います。
彼女は昔、本番に弱くて、
ソチ五輪でも、本来の力を発揮できなくて
負けてしまった。自分には、何が必要かと考え、
強豪のオランダにスケート留学に行ったんです。
そこで、「勝つためには相手を●すくらいの
闘争心を持ちなさい」と教わったそうです。
普通だったら、わかりましたと言って、その
とおりやると思うんですが、彼女は違いました。
「私は、人を●してまで勝ちたいとは思わない。
だったら、自分に克つ方法を徹底的に研究
しよう」と決意。そこで、何に目をつけたかと言うと、
コーナリングです。
直線コースは、パワーのある
オランダが強いけれども、曲線コースは
技術を磨けば自分の武器にできると。
そこから日本独特の
古武術を学んできました。
日本には、古きよきものがたくさんあるのに、
それを見ようとせず、欧米から学んだもので
よしとするのは、実にもったいない。日本人
には、日本人らしい考え方、体の鍛え方、戦い方
があるわけで、それを証明してくれたのが
小平さんです。
ご承知のとおり、平昌五輪では
日本女子スピードスケート史上初の金メダル、
かつ冬季五輪で日本人最年長の金メダル
という快挙を打ち立てました。
オリンピックで、世界の頂点に立つような
選手に共通していることの1つは、「挫折」した
経験があるということだと思います。しかも、
とてつもない挫折です。
それが、最終的には一番
の力になる。だから、挫折を愛している
人ほど強いですね。トップクラスの選手たちは、
皆さん本当に大きな挫折を経験しています。
でも、そこから逃げない。認めたくない自分の
弱さを受け入れて、前向きに頑張ることが、本当の
強さを得るための条件なのかなと思います...。
備考:この内容は、
令和4-3-25
発酵:致知出版社
「1日1話、読めば心が熱くなる
365人の生き方の教科書」
より紹介しました。