日頃、何かと厄介者扱いされる「G」...
といえば
ゴキ●リ。その体に太陽電池を装着させ、充電しながらリモコン
で操る「サイボーグ昆虫」の技術を、理化学研究所(理研)
= 埼玉県和光市=などが共同開発しました。成功に欠かせな
かったのは、理研の専任研究員、F田憲二郎さん(41)らが
生み出した超薄型の太陽電池。
サイボーグ昆虫は将来、災害
現場の探索などでの、活用を目指すそうです。「G」が
救世主になる日は、来るのでしょうか?
...サイボーグ昆虫の技術に
ついて、教えてください。
F田さん> まず、サイボーグ昆虫とは、
動きを制御するために電極などの
装置を取り付けた昆虫のことです。
動力を生み出す必要が
ないため、ロボットより消費電力が
圧倒的に少ないメリットがあり、
世界中で研究が進められています。
ただ、これまでは活動
をさせるのに十分な電力を生む
発電装置を取り付けることが
できませんでした。
今回使用したのは、理研が
ポリマーフィルム上に作製した
厚さ約4マイクロメートル(0.004ミリメートル)
ほどの太陽電池。
それを体長約
6センチの、マダガスカルゴキ●リの
腹部背面に貼りつけました。
また、胸部背面には、無線通信の
部品とリチュウムポリマー
バッテリーも装着させ、電極で
つなぎました。
疑似太陽光で30分間充電した
サイボーグ昆虫に無線通信を
使って信号を送ったところ、
約2分間、左右に移動を制御することが
できました。
この装置を
取りつけたまま、普通に生活させて
いたら、数週間で自然とはがれて
しまい、命に影響することは
ありませんでした。
...研究のきっかけは?
F田さん> 超薄型の太陽電池ができ、
安定して使用できるようになった
ころ、シンガポール南洋理工大
教授でサイボーグ昆虫の研究を
しているS藤さんと
話し合う機会がありました。
「これなら、充電式のサイボーグ昆虫が
できるのでは?」と着想したのが
始まりです。
研究をスタートさせた
2021年初頭は、新型コ■ナが
まん延していた時期。シンガポール
と行き来できなかったので、
S藤さんが、サイボーグ昆虫の研究に
採用していたマダガスカルGを
送ってもらいました。
この「G」は、過酷な環境にも
耐えることができ、体も
大きく、羽が無いため制御しやすい
という特徴があります。
...太陽電池と昆虫はまったく違う
分野。生き物を扱うのは
大変でしたか?
F田さん> はい。昆虫のことは、わからない
ので、その生体に詳しい
W稲田大学の学生に研究に加わって
もらいました。
昆虫の動きを
妨げないよう、太陽電池を作る
フィルムの材質や、その厚さも
いろいろ変えて実験をしました。
特に難しかったのは、接着方法。
腹部背面には節があり、
接着力が強いと、節が固定されて
しまって、ひっくり返った際に
起き上がることができませんでした。
試行錯誤を重ね、たどり
着いたのが、付けひげ用の接着剤。
均一に貼りつけるのではなく、
接着した面と接着していない面が
できるようにしたところ、
節の動きと連動し、スムーズに
動けるようになりました。
...いつごろ実用化
できそうですか?
F田さん> まだ、かなり時間がかかると
思います。完成すれば、センサーや
カメラも搭載し、例えば人が
入れない災害現場などの調査に
活用が期待されます。
装置を
もっと手軽な物にするなど、昆虫
の負担を、少なくできないかと
いう研究は引き続き進めています。
太陽電池についても、充電
時間をもっと短くし、消費電力の
効率化を図っていきます。
水などの影響を受けないよう耐久性も
向上させていきたいです。
そういう太陽電池ができれば、
サイボーグ昆虫だけでなく、
身近な生活の中で活用できる
ようになると思います。
...具体的には?
F田さん> 例えば、ドローンやスマート
フォン。太陽光で発電できれば、
便利ですよね?
フィルムなので
軽いし、自在に変形するので、
服にも取り付けられます。
以前、「太陽電池って、
そんなに薄くする必要があるんですか?」
と聞かれたことがあって。
実は、自分自身も同じ疑問を
持っていました。
でも、サイボーグ昆虫の研究によって、太陽電池
の厚さが、ほんの少し違う
だけで、昆虫が動けなくなることが
わかりました。
将来、ドローンや
小型ロボットに太陽電池を
取り付ける場合の重さや厚みの
目安がついたことも、
大きな収穫です...。
備考:この内容は、
2024-9-21
発行:C日新聞
より紹介しました。