【客の前でカバンをスラれた
ガイドさんの立場は...?】
名うての犯罪都市・Rサンゼルスに到着した
日本人観光客を迎えた新米ガイドのRさんは、一行を
バスに乗せると、昨夜、頭にたたきこんだ注意事項を
伝え始めた。
「最近、ロスでは、盗難事件が増えています。とくに
日本人観光客は、よく被害に遭うので、荷物は絶対に
手から放さないでください」
聞いている客が少ないのをのぞくと、じつにいい
アドバイスである。
さて、バスはホテルに着き、チェックインもすんで、
今後の行動予定を伝える時がきた。しかしRさんは、
アタッシュケースを横のテーブルに起き、ちょっと
みんなの方を観て、おもむろにケースを開けようと
手を伸ばしたまま、固まって
しまったのである...。
「あっ、カバンがありませんね?
さっき、そこに置いたのに...」
と、Rさんの前にいた老夫婦が
話をしている。その声に我に返ったRさんは、
いきなり立ち上がると、ロビーの中を
見回した。そこは、紳士淑女の集まるホテルと
あって、さすがに一目でドロボーと
分かるような人は1人もいなかった。
Rさんは、顔から火が出るように
真っ赤になるのがわかったが、もう遅い。
「ガイドさん。
顔が赤いが大丈夫ですか?」
老婦人が声をかけてくれたが、
返事もロクにできない。
「やっぱり、カバンを盗まれさったんだ。
ほんとにロスは、怖い街だね」
という、彼らの言葉に、完全に
トドメを刺されたガイドさんであった...。
備考:この内容は、
1994-1-5
発行:河出書房新社
著者:ユーモア人間倶楽部
「旅の大ドジ編
世にも恥ずかしい人々Ⅱ」
より紹介しました。