「よし子」
大丈夫?
あっ! よう子?
来てくれたんだ~?
それにしても、こんな、
1泊27万円もする病室、
大丈夫なの?
わかんないわ。
公園で、気絶して
救急車で運ばれて、
気がついたら、ここに居たのよ。
えっ!?
もうすぐ、産まれるというのに、
なぜ、そんなところの公園に?
まさか、よし子、あなた...!?
コン、コン、ガチャ!
そこへ、産婦人科の院長が、
やってきて...。
「おめでとう、ございます!
あなたのお子さんは、
当産婦人科、1万人目の赤ちゃんなんです。
分娩費用・入院費用は、
一切、病院で、持ちますから...。」
やった、ラッキー!
コン、コン!
あっ! たけ坊!
いままで、どこ行っていたのよ~?
いいのよ、
あなた入って。
赤ちゃんの顔、見ていってね 。
ところで、その持っている紙袋、
どうしたのよ?
それが、ミルク代でもと思って、
入ったパチンコ店が、
「パンパカパ~ン!
あなたは、当店始まって以来、
10万人目の来場客です。」
って、1万発の玉を、タダで、くれてさ~。
それで、出た玉を、
みんな、お菓子やチョコレートに、
交換してきたというわけさ...。
あっ、ここに、1個
開封されたチョコレートがあるわよ。
あ、それは、今、僕が、
食べかけていたんだ。
おや? 中から、
カードが出てきた...。
おめでとうございま~す。
このチョコレートは、当社製品
ちょうど100万個目で、
記念に、むこう10年間、
毎月、チョコをプレゼントしま~す。
きゃは!
どこまで、あなたたち、ツイているの!?
あっ、たけ坊!
ところで、ひょっとして、
大日本銀行のラッキークジ
買っていないかな?
よう子ちゃん、
わたし、1枚だけ、
買ったわ。
きゃは!
それを、早く言ってよね。
じゃ、今日の夕刊、
売店か、コンビニで、
買ってこなきゃ。
あぁ、夕刊なら、僕が、
たまたま持っているよ。
きゃは!
それを、もっと早く、
言ってよね。
よう子、
どう?
1枚だけだから、
やっぱりハズレでしょ!?
、
どれどれ?
ちょっと、待って、
今、調べてるから...。
やった~!
1億円、当たっているわ!
この赤ちゃんは、
本当に、幸運児ね!
これは、本当に、
1億円の当たりくじ。
わたし、確信した。
この子は、絶対、幸せになる!
ラッキーな、
星の下に生まれたんだわ~!
いかにも、その子は幸せになる。
一生を通じて、幸運に恵まれ続けるだろう。
それぐらいの特典は、
与えて、しかるべきだろう...。
382万63年前、
さまざまな試行錯誤の末、
タンザニアのオルドヴァリ峡谷に、
人類、第1号を創って以来、
その子がちょうど、
1,000億人目にあたるのだから...。
なんちって...。
てへぺろ。
備考:この内容は、
「紺野水季」
14万回視聴・9年前
”藤子・F・不二雄SF(すこしふしぎ)短編 幸運児”
より紹介しました。