洗濯機を回すべきか、回さざるべきか?
梅雨のこの季節は、刻々と変わる気象情報が
気になって仕方ない。
洗うのを諦めたのに、少し日が差せば
悔しい思いもする。
〈梅雨は降るり、梅雨は晴るると いうことを〉後藤夜半
きのうの関東は、梅雨の晴れ間となり、
我が家もタオルやシャツを、お日さまに当てることができた。
庭のキュウリやトマトも満身に
日をあびている、洗濯物が光合成をするわけではないが、
何だかエネルギーを吸収しているような。
英国の作家カズオ・イシグロの近刊
『クララとお日さま』は、太陽の恵みを信じるロボット
「クララ」の物語だ。「お日さまに出会えた
運のいい日は、顔を突き出し、できるだけ
たくさんの栄養をいただこうとしました」(土屋政雄訳)
自分のエネルギー源である太陽光が、
人間の病気も治すと信じて疑わない、だから、病の床に
いる少女のため、栄養分を注いでほしいと
お日さまにお願いするのだ。雨の季節に読み返すと、
クララの思いは、間違っていない気がしてくる。
本の表紙にあるのは大きなヒマワリである。
「日輪草(にちりんそう)」や「日車(ひぐるま)」
の名前もあり、英語では
「サンフラワー」。
人々は昔から、そこに
小さな太陽を見たのだろう。他の草花を見下ろすように
すっくと立つ姿に今年も出会うことができた。
〈向日葵の百人力の黄なりけり〉加藤静雄。
雨でも、それほど冷え込まなくなったのは、盛夏が
近づいているからだろう。
気がつくと、百日紅(さるすべり)や
木槿(むくげ)なども、我が物顔で咲き始めている...。
備考:この内容は、
2021-9-30
発行:朝日新聞出版
著者:朝日新聞論説委員室
「天声人語」
より紹介しました。