「あれ?
あの車かなぁ...?」
明かりの先に、かすかに車らしきものが
見えるんですが、
それにしても、この男、
そうやって、こんなところを、
登ってきたのか、
どうやって、助けに行けばいいのか...?
仮に、もう1人を発見したとして、
どうやって上まで
運び出せばいいものか?
とても、1人ではできない。
消防関係か、なにか、
頼めばいいわけでしょうが...。
「まずいな、これは...?」
「お願いします、お願いします!」
「これ、降りられるのかなぁ?」
降りられたとしても、●体だったら、
見たくないですからね。
「わぁ~、これ、俺1人じゃ、
ムリだな...」
「お願いします、お願いします!
確かめてみてください!」
しかし、こういう状況ですからね、
また、少し、下に下りてみようとすると、
ガ~ッ!
わ~っ!
落ちて、
とっさに、近くの小さい木を掴んだ!
わ~っ! 危ない!
あ~! 気がついたら、
手に持っていた懐中電灯を、
落としちゃったんですよ。
下を見ると、海中電灯の光が、
筋になって、あっちこっち、
照らしながら、落ちていくのが見えた...。
「あ~っ、落としちゃった、困ったな~!」
すると、後ろで
「チクショー!」って。
こいつ、何、言ってんだ!?
上がろうと思ったら、けっこう
男との距離が、きついんですよね。
「ぐーっ!」
どうにか、男の手を掴んだら、
「うっ! 冷た~い!」
男の手が、異常に冷たいんですよ。
そして、掴んだきり、
上げようともしない。。
「上げて~、上げてよ~!」
何してんだ、コイツは?
上げようと、しないんだ。
そのうち、
腹も立って来ますよね。
「上げて~、上げてよ~!」
すると、男の顔が、
薄明かりで、
かすかに、見えているんですが、
その男の顔が、
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ...」
って、そいつの笑い声が聞こえたんで、
「何だ、こいつ~!?」
生きている人間の声じゃないんだ。
わ~っ! と悲鳴を上げた、
それで、思い切って、少し、
よじ登ったら、明かりが見えて、
腕を掴んでくれる者がいた、
それは、B君だったんですよ。
A君> ふぅ、ふぅ、~、あれ?
あの男、どうした?
B君> そんな人、誰もいないよ、
俺だけだよ。
A君> いや~、それにしても、
よく来てくれたなぁ。
B君> 俺が、ふっと目を覚ましたら、闇の中、
お前が1人で、歩いて行くのがみえたんだよ。
A君> えっ? 俺が1人で?
俺は、1人じゃ、
なかったんだよ。
B君> いやいや、お前が1人で、
明かりをつけて行くから...。
あいつ、どこ行くんだろう?
と、心配になってさ、で、俺、
後から、来たんだよ。そうしたら、
お前、悲鳴あげててさぁ。
良かったよ、お前、落ちる
ところだったぞ!
A君> うっ! じつはなぁ、
これこれしかじか...。
B君> え~っ!
何だよ~、それ?
ちょっと、勘弁してくれよ~。
って、話になったんですよね。
で、車に戻ったんですけどね。
こうなると、もう、なかなか
眠れないわけだ。
=============
で、翌朝...。
陽が昇って来ると、
さっそく、昨日の崖を見に行ったんですがね。
すると、途中、立て看板があって、
「キャンプ禁止」になっているじゃないですか!
で、その先も、行けないように
杭が打ってあって、「立入禁止」に
なっているんですよね。
で、その先の
崖の底を見てみると、
確かに車が1台、
落ちていたんですよ。
「わ~っ、あった~!」
あったんですけど、昨日のあの男のことは、
いったい、どういうことだったんだろう?
と、不思議だったんです。
それで、荷物片付けて、
ワゴン車で帰っていく途中に、
たまたま地元の人がいたもんですから、
「すいませ~ん!」
と、声かけて、
「この先の崖のところ、
車が落ちていたんですけども、
あれ、いつ頃のものなんですか?」
「あ~、あれね。去年の春だね。
車が崖から落ちたんだね~。
それで、キャンプもダメだし、
立ち入り禁止の看板も立てたんだよ。
それでね、車の中から●体が、
1人、発見されてね。
そういうところだったんですよ」
と、教えられて...。
「え~っ? じゃ、その人が、
昨日、出会った人なのかなぁ...?」
===============
それで、何年が経過しまして、
A君たちが、キャンプした場所が、
小さな展望台に、なったんですよ。
だけど、車が、崖に落ちたままでは、
絵になりませんから。
地元でもって、引き上げたんですよ。
いや、実はね、
A地点から、C地点の間に、
B地点があったんですよ。川崎さん。
「えっ! そうなんですか、山本さん?」
そうしたら、車のトランクの中から、●体が
もう1つ、あったそうなんですよ。
すると、この男がA君たちに、
会いに来て、助けを呼ぼうと
したのでしょうか...?
それで、その後、この一件は、
事故から事件に、
変わったらしいんですよ。
だって、トランクの中の男は、
車が転落する前から
●されていたということに、
なりますからね...
とまぁ、そんな話がありましたね。
ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ...。
備考:この内容は、
「稲川淳二メモリアル・遺言」
37万回視聴・9ヶ月前
”超絶怒涛の特別編4・稲川淳二が噺す
5時間超えの怪談オンパレード”
より紹介しました。
一部、脚色した点、
お詫びします。