【どんな1日でも「これで満足」と思う...】
（山崎倉 マグロ漁師）
この前、どうしても1週間だけ、密着取材を
したいと言って、テレビ局が船に入りました。
6日経って釣れたのは、小ぶりなマグロ1本。
彼らは「もっと大きなものを撮りたいから、
あと1週間延長したい」と言いだした。
俺は、「1週間という約束で、引き受けたんだから、
ダメなものはダメだ。しかも、”1週間”には、
あと1日ある、明日いっぱいやったら、
それが結果だから...」
と、断りました。
映像が撮れなかったら困る
んでしょう、若いスタッフの1人が、
「山崎さん、エサを変えたらどうですか？ 他の船は
イナダとか、使って釣っているみたいですよ」
と言ってきた。
「何？ もう1回言ってみろ！と。俺は
あんたたちに給料をもらって、やっているんでないよ。
これでなければやらない」と、突っぱねました。
そうして、7日目の昼前かな、80kgを
越えたマグロが釣れました、前のよりも
大きかったから、もういいだろうと思って、
「もう映像は、撮れただろうし、船を下りてもいいよ。
俺はやるけど」と聞いたら、
「いや、まだ乗っていく」と。
そうして、日も暮れかかった頃、ポーンと
餌を投げたら、すぐに食いついて切ったマグロが
いて、引き上げたら100kgを越えていました。
「いやぁ、山崎さんはすごいね。
”明日結果を出す”
と言って本当に出した」って
ディレクターが驚いていたけど、
俺が出したのではなくて、
マグロが出してくれたんです。
テレビの人は、釣れたから、結果が出たって
言うけれど、たとえ釣れなくてもそれが結果。
7月から12月まで漁に出て、1匹も釣れ
なくても、それが俺の6ヶ月の勝負の結果です。
だから、どんな1日でも、「これで満足」と
思うようにしています。大きなマグロが上がろうが、
まったく釣れなかろうが、せっかく
沖に出たのに、シケで1時間しか漁ができなくても、
「沖に出ただけで満足」。
そうやって1日の漁を満足して終えることが
予測できない
この仕事を続けていくための
心の構え方と思います...。
備考：この内容は、
令和4-3-25
発行：致知出版社
「1日1ワ、読めば心が熱くなる
365人の生き方の教科書」
より紹介しました。
