泣けるシリーズ「ほほえむまでの時間」...その4 | Q太郎のブログ

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20歳で妊娠、出産 。若いママだからという目で見られる苦悩 ...

 

 

 卓哉の命を授かったとき、舞子は

 

短大の2年生だった。大手の食品メーカーに就職が決まり

 

かけていて、その時、付き合っていたフリーターとは、

 

「卒業したら別れよう」と自分の

 

中でなんとなく決めていた。恋愛なら

 

よくても、ずっと一緒に生きていく相手かどうかは、

 

まだ自信が持てなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院生活について|神戸市立医療センター西市民病院

 

 それでも、舞子は結局、そのフリーターと

 

結婚して卓哉を産んだ。もちろん、何日も眠れない

 

ほどに迷ったけれど、自分の中に息づく

 

命を吹き消してしまうことは、どうしても出来なかった。

 

就職はあきらめることになったが、

 

一度決めてから出産までは後悔しなかったと思う。

 

 

 

 

 

卓哉と3人の生活が始まる少し前に、

 

夫は近所の印刷会社に勤め出した。フリーター時代は、

 

どこでも長続きしなかったようだが、

 

「すぐに辞めてブラブラするんじゃないか?」という舞子の

 

心配は取り越し苦労に終わった。

 

 

 

舞子の作った弁当を持って8時半には出勤し、仕事が

 

終わると、飲みにも行かずまっすぐ帰宅して、

 

卓哉の面倒を見てくれる。どこから見ても文句の

 

つけようがない夫だった。

 

 

 

 

 

そんな夫を変えてしまったのは、

 

ほかならぬ舞子だった。

 

 

 

 

もっと広い部屋に住みたい。

 

家計のやりくりが大変だ。

 

なかなか外に出られなくて、息が詰まる。

 

 

 

 

 

仕事から帰ってくる夫を待ち構えて、

 

毎日のように不満をこぼし続けた、そして、口には

 

出さなかったが、

 

「あのとき違う道を選んでいたら...」

 

という思いも、もちろんあった。夫の帰りが

 

遅くなるにつれて、舞子の愚痴もどんどん増えて、

 

やがて夫は帰ってこなくなった。置き手紙は

 

なかったけれど、今、考えてみればわかる。

 

家族3人で暮らしていた最後のころ、夫の背中は

 

はっきりと「もう限界だ」と語っていた。

 

 

 

 

 

舞子は数日経っても大原の申し出に

返事を出来ずにいた。とりあえず卓哉を大原に会わせて

みようか? 何度もそう思いかけたが、

 

いざとなると勇気が出なかった。2人を引き合わせる

のは、自分が新しい生活に向けて踏み出す

決意をした後でなくてはならない。

 

 

 

大原の気持ちは、この先も変わらないのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを、グルグル考え出すと

 

止まらなくなる。そんなふうに迷ってしまうということは、

 

大原に対する自分の気持がまだ固まって

 

いないのかもしれない。そして月の半ばを過ぎる

 

頃には、やはりこのまま同じ生活を続けた

 

方がいい、という結論を出しかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなある日だった。工場から帰ってきた

 

舞子が、いつものように自転車を置きに行くと、

 

卓哉の自転車が倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落書きされた壁 | グラフォン無料素材

 

 あわてて直そうとしたら、

 

自転車のサドルに、ヘタくそな文字で何か

 

書いてあるのが目に入った。荷台にも

 

泥よけにも、白いマジックのようなもので落書きが

 

してある。

 

 

「ビンボー!」

 

「くさい!」

 

「ボロ自転車」...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友達がイラストの泥だらけなので男の子が笑っているのイラスト ...

 

 

 そういえば数日前、卓哉が泥だらけに

 

なって帰ってきた。両ヒザを擦りむいていたので、

 

「どうしたの?」と、何度も聞いたが、卓哉は

 

「転んだ」とくり返しながら、舞子の背中に

 

自分の頭を押し付けるだけだった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母に抱かれて泣く子[11004037029]の写真・イラスト素材|アマナ ...

 

 

 

 母子家庭だからって、馬鹿にされたくない。

 

夫がいなくなっても、美里や実家の親から

 

援助なんて受けたくない。

 

 

 

 

 ずっと、そんなふうにして、1人で

 

突っ張って生きてきた。でも、自分の貧しさが、そして

 

意地っ張りが、かたくなな性格が、いつの間にか、

 

卓哉を苦しめていた。そのことに今まで

 

気が付かなかった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20インチ 身長120cm~ 子供用自転車 ハマー ジュニア CTB206N-TZ ...

 

 

 何かが、胸の中ではじけるのを感じながら、

 

舞子はふと美里の柔らかな笑顔を思い出した。

 

あの子なら、私の持っていないものを何でも、

 

卓哉にあげられるはずだ。新しい自転車だけでなく、

 

手のかかった食事も、自分だけの部屋も、

 

そして優しい母親のぬくもりや、家族3人の

 

不自由のない暮らしも...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家族でスーパーへ買い物はNG!?3年間で500万円貯めた節約 ...

 

 

 「今日は焼肉にしようっか? ステーキでもいいよ」

 

連休に入った最初の日に、舞子は卓哉を

 

連れてスーパーへ出かけた。いつも行く激安店でなく、

 

珍しい輸入食品も置いてあるスーパーだ。

 

 

「じゃあね。シモフリ。おばちゃんの

 

ところで食べたのと同じやつ」

 

 

 

「霜降り? 生意気だなぁ、小学4年生のくせに!」

 

 

 

舞子は迷わずに、100g千円以上もする

 

牛肉のパックを買い物かごに入れる。

 

さすがの卓哉も、「いいのかよ、舞子?」

 

と、ビックリしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最高級肉の甘味…神戸牛 霜降り特上スライスが9日19時より半額 ...

 

 

 食後には、イチゴがいいのだろうか? それとも...。

 

卓哉の好きなものを、どんどんカゴに

 

放り込んでいきたかったが、いざとなると、

 

何も浮かばない。そんな自分に気がついた舞子は、やはり

 

自分は母親失格なのだと、思わずに

 

いられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光と苦悩…けがに泣いた狩野舞子が最後伝えたいこと - We Love ...

 

 

 1週間前に会った大原には

 

「ゴールデンウィークの間に卓哉と2人で行く」と言って

 

あった。卓哉を連れて行かないとはじめから告げたら、

 

きっと心配するだろうから。子どもを

 

捨ててきた自分を大原は受け入れるだろうか?

 

舞子にもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天才と呼ばれて…元バレーボール日本代表・狩野舞子、現役引退後 ...

 

 もしだめだったら、1人で

 

仕事を探して、何とか暮らしていこう。

 

自分は結局のところ大原を利用しようとしているのだから、

 

その方がいいかもしれない。何に利用するのか?

 

それは、はっきりしていた。

 

 

 

卓哉を捨てる言い訳として、2つ年下の

 

恋人もどきを利用するのだ...。

 

 

 

 

 

 

 

備考:この内容は、

2009-5-2

発行:泰文堂

編著:リンダブックス編集部

原案:水森野露

小説:田中夏代

「99のなみだ・風・

涙がこころを癒す短編小説集・

ほほえむまでの時間」

より紹介しました。