【次元のすごいテクニック...】
だが、次元は他の場面で驚くべく
テクニックを見せている。
まずは、銃の整備。「荒野に散った
コンバットマグナム」で、次元は宿敵・
ストーンマンと決闘することになる。
約束の時刻は午後3時。決闘の場となった
ブランコ公園は、国境を壁に囲まれており、
唯一の門は午後4時に閉まる。
公園で秘宝を手に入れたルパン一味は、
一刻も早く公園を脱出しなければならない。
ところが、次元は決闘を優先し、ルパン
たちと一緒には行かないと言い張る。
そこで、次元の勝利と脱出の両方を
狙ったルパンは、オドロキの策に出た。
次元のコンバットマグナムをバラバラに
分解し、決闘場から国境の門まで並べた
のだ。これかい、荒野に散ったコンバット
マグナムって...?
それに気づかない次元は、決闘の
場に丸腰で来てしまった。腰に差したはずの
マグナムの部品が荒野に点々と並んで
いるのを見た次元は、ストーンマンが
浴びせる縦断をかいくぐりながら、部品を
集めて組み立てていく。国境の門の近くで
ようやくマグナムが組み上がるや、
次元は振り向いて一撃。弾丸はストーンマン
の胸を貫いた...。
ゴルゴ13も、道具の揃わない包囲網の中で
M16をクリーニングしたことは
あるが、さすがに撃たれて逃げながら銃を
組み立てたことはない。銃整備の技能に
おいては、次元のほうが上だろう...。
だが、次元には決定的な弱点がある。
いつも被っている帽子がないと、まったく
弾が当たらないのだ。『次元と帽子よ拳銃と』
で明らかになったが、次元の
帽子サイズ58.25cm。つばさの長さ8.6cm。
厚さ1.2mm、ゾウアザラシの
オス4歳の革製と決まっていて、拳銃を
撃つときは、帽子のつばで照準を
合わせている。この大事な帽子を、ミネソタ・
ファッツに濃硫酸で焼かれてしまった
ときは、次元は15m離れたファッツに、
1発も当てられなかった。
また、帽子をかぶっていても、次元には
打ち損じが多い。『バラとピストル』と
いう話では、本物のルパンを敵が変装した
姿だと思い込み、まともに9発の弾丸
を撃ち込んだにも関わらず、1発も
当たらなかった。
一方、『ゴルゴ13』の連載が始まったのは
1968年。本稿執筆時点までの45年、
コミックス全170巻にわたる射撃の中で、
ゴルゴ13が弾を外したのはわずかに
数発である。長距離射撃と命中率においては、
ゴルゴ13のほうが次元を
上回ると結論せざるを得ない。
この2人が銃で勝負したら、どうなるのだろう?
これまでの考察によれば、
遠距離からライフルで撃ち合えば、
ゴルゴ13が勝利することになるだろう。では、
近距離で拳銃を打ち合った場合は?
2人が胸のホルスターや腰のベルトから
拳銃を抜いて発泡するまでの時間は、
ゴルゴが0.17秒、次元が0.3秒だという。
標準的な拳銃弾の速度は
秒速400mだから、2人が20m離れて
いたとすれば、先に撃ったゴルゴ13の弾丸は
0.05秒で、次元に達し、次元は撃つ
0.08秒前に倒されてしまうことになる。
無念!
だが、周知のとおり、ゴルゴ13が
狙撃するのは、納得できる依頼を受けた標的か、
裏切り者に限られる。次元が銃を向けるのも、
自分の命を狙う者だけだ。
すると、作品の垣根を越えて、次元の暗●を
ゴルゴ13に依頼する者が現れない限り、
2人の対決は実現しないことになる。
次元は、ルパンらとともに、TVスペシャル
および映画『ルパン三世 vs 名探偵コナン』に
出演したことがあるが、万が一、
ゴルゴ13とのコラボ企画が持ち上がっても、
念の為にキッパリと出演を
断っていただきたい...。
備考:この内容は、
2016-12-2
発行:KADOKAWA
著者:柳田理科雄
「空想科学読本 14」
より紹介しました。