「きみまろさんは、ふだんどんな
生活を送っているんですか?」という質問も
よく受けます。オフの日は畑仕事、
ネタを考えるのは、布団の中というお話を
しましたが、ここで、1日の流れを
ざっと、ご紹介しましょう...。
朝、起きるのは、4時から5時くらい。
目が覚めちゃうんです。わたしも、
いい年だから。いても立っても
いられなくなって、まず起き上がります。
立てないんだから、やっぱり年です。
そのあと、2時間くらい本や新聞を
読みます。で、7時ぐらいになると、
眠くなってくるので、1時間くらい2度寝
をします。
「ウィリアム、早く起きないと、
仕事に遅刻しますよ」
わたしの元マネージャーでもあった
女房の声で目を覚まし、だいたい8時
くらいに、朝ごはんを食べます。
わたしは、なにしろ痛風持ちの高血圧
ですから、贅沢は敵。毎日のご飯は、
あれ? いつの時代の食事? というほど
粗食です。
私は、子供の頃から肉が
大好きでした。若い頃は、肉汁のしたたる
ステーキが食べたくて、仕事をしていた
ようなものです。
ところが、世の中は皮肉なもので、
ようやく売れるようになったころから、
肉を食べる生活ができなくなりました。
たとえば、豚肉の角煮なども、大好物
なので、旅先で女房に隠れてちょっと、
食べたりすると、すぐに、足の先がピリピリ
してくるのです。
「マーガレット」のたたりかも、しれません。
さて、ライブは、だいたい地方が多いので、
旅から旅の暮らしです。仙台から
最終の新幹線で帰って来て、東京駅前の
ホテルに止まって、翌朝、大阪へ向かう
といった強行スケジュールもあります。
茨城県や神奈川県など近場での
ライブや、テレビやラジオの収録日だと、
日帰りできますので、夜は自宅で女房と
水入らずの食事をします。
若い頃は、赤坂や六本木、新宿・
歌舞伎町などを徘徊し、あちこちで
精を出していたこともありましたが、
50の声を聞く頃から、
「きみまろや、
もうちょっと静かに、穏やかに生きなさい。
もうあちこちで、精を出すような年では
ありませんよ」という声を天から
聞こえたような気がしました。
それからというもの、クラブを
飲み歩くようなことは、ほとんどなくなりました。
もともと、わたしは、お酒があまり
強くないんです。飲むと、眠くなるんです。
そうすると、本を呼んだり、
夜中に布団の中で、ガサガサゴソゴソする
時間を持てなくなる。もういいや、
寝ちゃえ! ってなるから、ネタを考える時間
が持てなくなるんです。
こう見えても、不肖 「きみまろ」、
まじめな性格です。お酒を飲むより、ネタを
考えるほうが楽しいから、家に帰っても
晩酌はしません。たまに寝付けない
とき、芋焼酎をちょいと引っ掛ける
程度です。
タバコは、30歳から吸いはじめて、
40歳になる前にやめました。30歳
から吸い出したというと、中途半端
というか、遅い印象を持たれるようですが、
そのころのわたしは。なんとなく
大人になりたかったのです。いい年をして
なんとなく子どもだったわたしの、
社会に対するささやかな背伸びでした。
ところが、タバコを吸って得たものは、
「声が出なくなる」
「体調が悪くなる」
「口が臭くなる」の3悪でした。
楽しくなるのなら味をしめたのでしょうが、
よいことは何も起こらない。
それで、喫煙期間10年の大台を目前に、
禁煙したのです。潜伏期間30年に
比べたら、あっけない幕引きです。いまは
吸いたいとは、まったく思いません。
まじめな河口湖の夜は、酒も
タバコもやらずに、こうして更けていきます。
ここ河口湖畔には、赤坂や六本木に
いるような、若くてきれいな女性は1人も
いません。その代わり、気のいい
おじさんやおばさんは大勢います。こうした
環境のもと、「きみまろ」は仙人のような
1日を終えるのです...。
備考:この内容は、
2009-7-27
発行:PHP研究所
著者:綾小路きみまろ
「こんな夫婦に誰がした」
より紹介しました。