...と思っていた矢先、私は許しがたい光景を
目の当たりにした。桂木は、
その千里眼を使った●感商法で、老人たちに
高額の”金の分銅”を売りつけ、
荒稼ぎしているではないか! もはや、
黙っているわけにはいかない。そのウソを
白日の元にさらしてやる。
「ラドン上田」の名にかけて...。
翌日、私は、どうしてもついていきたいと
駄々をこねる山田を、仕方なく
引き連れ、桂木の事務所を訪れた。その日も、
悩みを抱えた老人たちの列が外まで
続いているという繁盛ぶりだ。
まさか、その老人たちの間をかきわけて怒鳴り
込むわけにもゆくまい、そのときばかりは、
さすがの私も、列の最後尾で「待つわ」のこと
にした。それにしても、行列に並ぶのは
久しぶりだ。
思い起こせば、「薬師丸ひろ子」の
舞台挨拶を見に行って以来だから、
実に40年ぶりになるだろうか? たまには
こうして、一般庶民の行動パターンを
実体験しておくのもいいものだ。
そうしているうちに、私は、例の”金の分銅”を
手にした車いすの少年とその
母親を目にする。どうやら、カラダを●った
少年のために、母親が、すがる思いで
桂木から、”分銅”を購入したらしい。
「ボク、これで治るんだよね?お母さん!」。
少年は、無邪気な笑顔で母親にそう問いかける。
こんな子どもまで、だますとは...。
桂木弘明章、目にものを見せてやる!
私は怒りも新たに桂木と対峙した。
しかし、助手として、すっかりその気に
なっている山田は、
「上田先生様、
この場は、どうぞ、私めにお任せください。
この貧乳にかけて、桂木をぎゃふふふふ~んと、
言わせてやります」と鼻息も
荒い。
確かに、桂木程度の相手に私自身が
手を煩わせることもない。若干、
心もとないが、ここはその意気込みに
かけてやろう...。
そう考えた私が、甘かったようだ。
山田は、誰も知らないはずの自分の部屋の
様子を桂気にすっかり言い当てられ、
いとも簡単に、やり込められてしまった。
さらに、ぼろアパートまで様子を
確かめに来た老人たちの一行には、
”だらしがない貧乳女”などと、罵られる始末。
しょせん、山田の力では、この程度が
限界か?
私は、あらためて桂木との
直接対決を決意した...。
備考:この内容は、
2002-11-30
発行:学習研究社
著者:上田次郎
「どんと来い、超常現象」
より紹介しました。
つづくと、いいですね...?