綾小路きみまろ「有効期限の過ぎた亭主、賞味期限の切れた女房」...その6

いいですか、皆さん。

更年期の兆しが見え隠れ、

あっちが痩れ、こっちが痩れ、

若いときの痩れとは種類が違います。

その痩れを取るために、油をつけて

マッサージ。いくらやっても老けてゆく。

これが本当の老いるマッサージ。

なんちって...。

艶のない上半身、用のない下半身、

もういまは、尿の検査と、

あとはおしっこするだけです。

あとは、歩いているところを、

ただ付いてくるだけで...。

いたしかたのない、この現実を、

あなたは、どうお考えですか？

「長生きしたってしょうがねぇだろ！」と言いながら、

栄養剤を飲んでおります。

誰だって歳なんか取りたくありません。

歳を取るとシミは増え、シワは増え、

目方まで増え、コレステロール、中性脂肪、

血糖値、ありあまるほどの皮下脂肪、

増えるものばっかりです。

減るのは貯金と髪の毛ぐらいです。

でも、ものは考えようです。奥さま、

シミなんか、気にする必要はありません。

シミは、ブローチだと思えばいい。

イボは、黒真珠。

シワはデザイン。

たるみは

アクセサリー。

ぷっくらと、ふくらんだ腹は食料タンク。

でっかいお尻は燃料タンク。

そう思えば気がラクです。

年齢なんか気にすることはありません。

大切なのは、いくつに見えるかです。

いまさら、高い化粧品を使おうが、どんなに

腹筋を鍛えようが、そのへんにいる

少年少女の、肌の艶や腹筋には、とうてい

及ばないのです。

若さは、潔く若い世代に

明け渡す、大切なことは、自分より

若くてきれいな人に近づかないことです。

ほとんどの方が出っ張った腹を抱え、

残り少ない歯で食いしばって、昔、抜いて

いた白髪を染め始め、流す涙は...。

真横に流れ、化粧しているのに、化粧

していろといわれ、手間暇かけたお化粧も、

汗で流れて土砂災害。

どんなに若くつくろうが、写真に写ったら歳相応。

どんなに、きれいなお化粧をしようが、

どんなにきれいなお洋服を着ようが、

そのお化粧とお洋服を取れば歳以上...。

304日　サバ読み

手島優　2歳　サバ読み

芹那　3歳　サバ読み

夏川純　3歳　サバ読み

小桜セレナ　10歳サバ読み

【本文ここから...】

そんな生活の中、奥さまがたは、

旦那さんが働いているあいだ、友達と

レストランで待ち合わせ、食べながら、

痩せる話をし、食べているケーキは

ババロア。そのあいだ、旦那さんは、満員電車に

揺られ、会社のほうへ...。

ポッケに小銭を入れた旦那さんは、

会社の近くの定食屋で、みそさば定食、

しおさば定食、焼き肉定食、煮込み定食...

元気なんか出るわけないです。

土曜、日曜で、疲れなんか取れる

わけではないです。そのあいだ、奥さんは

友達と、観光バスで旅行に出かけ、行った先の

温泉地で、友達と露天風呂に入れば、

トドの群れ。あげくの果て、帰りには

観光バスで、綾小路きみまろのテープを

聞かされて、他人事と笑い転げ...。

謹んでお喜びを申し上げます。

旦那さんは、厳しい管理社会のなかで、

少しばかりの給料をもらって、

ローンで家を立てて、払い終わったころ、

家はボロボロ。身体もボロボロ、目は

ショボショボ、足はガクガク、おしっこは

チョロチョロ、腰はヨタヨタ。

仕事も身体もぼちぼち、ぼちぼち、

墓地でも行こうかしら。妻や子供の

ために汗水長して働いて、酒と薬を交互に

飲みながら、会社のために、手となり

足となり、クビになり。会社に行けば、

上役にしごかれ、部下に陰口を叩かれ、家に

帰れば女房の愚痴を聞いて、子供たちは

さまざまな問題を持ち込んで。会社で。

気のつかないOLに気を使っているうちに、

髪の毛の半分は風と共に去り、

残りの髪の毛の運命も、風前の灯火です。

一生懸命働いて、やっとの思いで手にした

退職金でさえ、妻や子供たちが

その分け前を決めて。やけ酒飲んで帰れば、

オヤジ狩りに遭い。会社ではいらない、

家に帰れば女房からもいらないといわれ。

あぁ、家も会社も、どこかに捨てて

蒸発したい。そんな勇気もなく、

言う気もなく、

たどり着いたところは自動販売機の前。

あぁ、明日があるさ、ジョージアで...。

備考：この内容は、

2009-7-27

発行：PHP研究所

著者：綾小路きみまろ

「有効期限の過ぎた亭主・

賞味期限の切れた女房」

より紹介しました。