自分よりも何倍も大きい「ドトウ」が
近づいてきても全く動じない「メト」。
【特集：猫の尻に敷かれています...】
本誌夏号でも、紹介した引退馬
牧場「ノーザンレイク」。そこで、
暮らす猫のメト（推定4歳オス）が
人気G1ホースのメイショウドトウ
（引退馬協会所有）の背に乗った
のが、きっかけで、ノーザンレイクの
馬猫たちの人気は急上昇。
そしてこの度、フォトブック
『ボス猫メトとメイショウドトウ』（辰巳出版）
が、刊行されました。
どんなときもマイペースなボス猫メトと
馬たちの物語を、フォトブック
より、一部抜粋してご紹介します。
（文：佐々木祥恵 写真：芳澤ルミ子）
草を食む女子チーム。
左からキリシマホシ、アシゲンチャン、
タッチノネガイ、タッチデュール。
北海道日高地方沿岸の中部
に位置する新冠町は、日本
有数の競走馬の産地となっている。
その新冠町に引退馬の牧場
「ノーザンレイク」がある。
相方で、
元JRA厩務員の川越靖幸と、
2人で引き取った愛馬
キリシマホシ、そしてキリシマの
友達として譲り受けたアシゲチャン
とともに、ノーザンレイクに
足を踏み入れたのは、2020年
7月15日。
ボス猫らしく
牧場を見回る。
その3日後、ニャア
という鳴き声とともに、草むらの
中から突如現れたのが、茶白で
カギしっぽの猫、メトだった。
調べてみると、カギしっぽの猫は、
しっぽの曲がった部分に
運を引っ掛けてくると言われて
いることがわかった。
まさか本当に
ノーザンレイクにたくさんの
福を招く猫になるとは、
このときは想像だにしなかった...。
メトは、異常に人懐っこく
よくおしゃべりをし、来客がある
とすぐに出てきてもてなしを
する。
馬たちとも、あっという間に
馴染み、厩舎の中も我が物顔で、
闊歩していた。
川越と私が
些細なことで口喧嘩すると、
間に割り込んできて、仲裁もする。
いつしかメトは、ノーザンレイクの
ムードメーカーになっていた。
メトが、癒やしているのは、
人だけではない。馬もだ。体の大きさに
違いはあれど、馬たちはみんな
メトに寄り添い、メトもまた
自由に馬たちとの交流を
楽しんでいるように見える。
人間と同じように猫の柔らかな体に
鼻をうずめているときの馬の優しい
瞳を目にすると、気持ちが
なごむ。
と同時に、馬をも、魅了する
メトの癒やしのパワーに
驚かされる。
馬は、臆病な性質だが、メトに
警戒することは、一度もなかった。
お互いが気になる存在のメトとドトウ。
彼らは、とても自然に、
当たり前に、互いの存在を受け入れていた。
馬たちとメトは、お互いに、
自分たちの仲間であり、
そこにいるのが、当たり前の
存在となっている。
厩舎や牧場内では、
馬たちと、猫1匹で、ひとつのチーム
なのだ。
2021年6月、人気ゲーム
「ウマ娘」のモチーフにもなって
いるメイショウドトウと
タイキシャトルが仲間に加わり、
牧場内の空気が変わった。
Twitter（現X）のフォロワーが毎日
100人単位で、増えていき、
それまで1,000人に満たなかった
フォロワーがあっという間に
1万人を超えた。
メトが、2頭に絶妙に絡むものだから、
メトの人気も急上昇。
2022年5月に
ドトウの背中にメトが
飛び乗った動画をSNSにアップ
すると、ドトウ＆メトの人気は
爆上がりし、メディアでも
取り上げられるようになった。
ネットやテレビなどメトが主役の取材も
増え、2023年には、とうとう
猫雑誌「猫びより」から取材依頼
（しかも、執筆は私）が、舞い込んだ。
まさか、猫雑誌にメトが主役で
掲載され、私自身も猫雑誌で
記事を書く日がくるとは、夢にも
思わなかった。
草を食む女子チーム。
左からキリシマホシ、アシゲンチャン、
タッチノネガイ、タッチデュール。
それが、きっかけで、
このフォトブックを出版するという
驚きの展開になった。この機会に
猫好きの方をはじめ、より多くの
方にウマの持つ魅力に触れて
もらいたい。競争や繁殖、乗馬から
引退した馬たち...。
そして、そのような馬たちが暮らす牧場の
現状を知ってもらいたいと書き綴った。
メトやメイショウドトウを
はじめとする馬たちの暮らす
小さな牧場の物語を
楽しんでいただければ
幸いだ...。
備考：この内容は
2024-1-1
辰巳出版
「猫びより」
より紹介しました。