それまで、僕は、ずっと、
1人ぼっちだった。
だれとも、うちとけられないまま、
6年前、ちょっと、おかしくなって、
サハラ砂漠に降りた...。
ぼくのエンジンの中で、
何かが、壊れた...。
僕には、見てくれる人も、
お客さんも、
いなかったから、
直すのは、難しいけれど、
全部、1人で、
なんとか、やってみることにした。
それで、僕の命が決まってしまう...。
飲水は、たった、
7日分しか、なかった...。
1日目の夜、
僕は、砂の上で、眠った。
人の済むところは、
はるか、彼方だった...。
海のど真ん中、
イカダで、さまよっている人よりも、
もっと、1人ぼっち...。
だから、僕が、ビックリ
したのも、
みんな、わかってくれると思う...。
実は、朝日が登る頃、
僕は、不思議なかわいい声で、
起こされた...。
【ごめんください...。
「ひつじ」の絵を、書いて!】
えっ!
僕に、ひつじの絵を書いて?
雷に、打たれたみたいに、
僕は、飛び起きた。
目を、ごしごしこすって、
目をパッチリあけた。
すると、へんてこりんな男の子が1人、
思うつめたような様子で、
僕のことを、
じっと、見ていた...。
後になって、この子の姿を、
割とうまく、
書いてみた...。
でもきっと、僕の絵は、
本物の魅力には、かなわない...。
僕が、悪いんじゃない。
6歳の時、
大人のせいで、
絵をあきらめちゃったから、
それからずっと、
絵に触れたことがない...。
なかの見えない「ボア」の絵と、
中の見える「ボア」の絵があるだけ...。
それは、ともかく、
いきなり人が出てきて、
僕は、目をまるくした。
なにせ、人の住むところの、
遥か彼方に、
いたんだから...。
でも、男の子は、
道を探しているようには、
見えなかった...。
へとへとにも、
ハラペコにも、
のどが、カラカラにも、
びくびくしているようにも、
見えなかった...。
人が住むところの
遥か彼方の、
砂漠のど真ん中で、
迷子になっている...。
そんな感じは、
どこにもなかった...。
やっとのことで、
僕は、その子に、声をかけた。
「えっと、ここで、
何をしてるの?」
すると、
その子は、ちゃんと伝えようと、
ゆっくりと、くりかえした。
「ごめんください...。
ヒツジの絵を書いて」
ものすごく、不思議なのに、
やってしまうことってある。
だから、やってしまう
ことってある...。
それで、なんだか、
よくわからないけど、
人の住むところの、
遥か彼方で、
●ぬかもしれないのに、
僕は、ポケットから、
1枚の紙と、ペンを、
取り出した... 。
でも、そういえば、
僕は、地理や歴史、
算数や国語ぐらいしか、
習っていないわけなので、
僕は、その男の子に、
ちょっと、しょんぼりした声で、
「絵心が無いんだ」
というと、
その子は、こう答えた。
「大丈夫。
ぼくにヒツジの絵を書いて」
ヒツジを書いたことがなかったから、
やっぱり、
僕の書ける2つの絵のうち、
1つをその子に、
書いてみせた。
中の見えない「ボア」だった...。
そのあと、男の子の言葉を聞いて、
僕は、本当にビックリした。
「違うよ!
ボアの中の象なんて、
ほしくない!
ボアは、とっても危ないし、
ゾウなんて、でっかくて、
じゃまだよ。
ボクんち、すごく
ちっさいんだ。
ヒツジがいい。
ボクにヒツジを書いて!」
なので、
僕は、書いた...。
それで、その子は絵を、
じっと、見つめて...、
「ちがう!
これもう、病気じゃないの!
もう1回!」
僕は、
書いてみた...。
ぼうやは、しょうがないなぁ、
と、笑った。
「見てよ。
これ、ヒツジじゃない!
”オヒツジだ!”
角があるもん」
僕は、絵を、
書き直した。
だけど、前のと同じで、
ダメだと言われた...。
「これ、
よぼよぼだよ。
ほしいのは、
長生きするヒツジ」
もう、我慢出来なかった。
早く、エンジンを、
バラバラにして、
行きたかったから、
サッと、こういう絵を書いた。
僕は、言ってやった。
「箱ね。
キミの欲しいヒツジは、この中」
ところがなんと、
僕の小さな審査員くんは、
目をキラキラさせたんだ。
「そう!
ボクは、こういうのが、
ほしかったんだ!」
このヒツジ、
草いっぱい、いるかなぁ?
だった、ぼくんち、
すごく、
ちいさいんだもん...。」
「きっと、平気だよ。
あげたのは、すごく小さな、
ヒツジだから...」
その子は、顔を絵に、
近づけた。
「そんなに、小さくないよ...
あっ! 眠っちゃった...」
ボクが、あのときの王子くんと、
出会ったのは、
こういうわけなんだ...。
備考:この内容は、
「フリーアナウンサー・
しまえりこの朗読読み聞かせ」
61万回視聴・2年前
”睡眠朗読・星の王子さま
~アナウンサー朗読・
あのときの王子くん~”
より紹介しました。
(14:04 / 3:04:32)