'84年に、デビューして以来、平成12年で、
17年目を迎えたロングセラー、
GPZ900R ニンジャ。
当初は、世界最高速を狙ったスーパースポーツとして
生み出され、そのハイパフォーマンスで人気を得た。
その後、時間の経過とともに、オーソドックスな
スポーツモデルという位置づけになってきて
いる。
が、その変わらぬ基本構成とスタイリングは、
今なお、多くのファンを魅了してやまない...。
【バランスのいい、オーソドックススポーツ...】
穏やかで優しい乗り味
この追跡シリーズで「ニンジャ」は、'89年と、国内
仕様が発売された'91年に取り上げた。9年ぶり
3度目の登場である。
今回の試乗は、マイナーチェンジで改良・熟成が
図られた'99年型 = A12
の国内仕様だ。
車体色は、ライムグリーン/
ホワイト。デビュー以来、デザイン及び、基本的な
造りは変わらず、見慣れたもの。新鮮味はないが、
逆に、まったく気負うこと無く、乗り出す
ことができる。
ライディングポジションも緩やかなもので、
またがったとき、緊張感を抱くことはない。
ハンドルは、セパレートタイプだが、フレーム
ヘッドパイプ位置が高く、そのマウント位置も
高い。
上体は、ゆるい前傾姿勢となる。シートは
スポンジは厚いが、幅は狭く、足つきに対する
不安はない、ステップの位置もいい。
暖機後、走り出して、ソフトな乗り心地だな
と思った。前後サスの設定が柔らかく、よく
動く。個人的には、もう少しダンパが、効いて
いたほうが好みだが、量販市販車としては
妥当なセッティングだろう。
ハンドリングは、素直だし、エンジンの
トルク特性がフラットで、3000rpm以上なら
ほどよい力が、いつでも取り出せるから、都内の
渋滞路でも走りやすい。
63kW(86ps)/9000rpm
というスペックは、900cm3(cc)のスポーツ
モデルとしては、少し物足らないのかもしれない。
低中速域からシャープな吹上がりと、
加速を見せるとは言い難い。だが、だからこそ、
乗りやすいとも言えるし、ブン回さなくても
大抵の用は足りる...。
サスペンションがソフトで、車体にも
ガシッとした鋼製感はなく、ここ10年のスポーツ
モデルと比較すれば、全体的な乗り味も
柔らかくてて、人当たりがいい
感じである...。
車重は、装備状態で255kgあるが、
特に重いとは、
感じさせない。ハンドルの切れ角が、
36度と大きいからUターンもしやすいし、
取り回しは、けっこう楽だ、
マイルドな乗り味は、
高速道路でも変わらない。
80~100km/hくらいで、
おとなしく走っていても、
それ以上のスピードレンジでの
クルージングでも、楽な気持ちで走れる。
カウルやスクリーンの、ウインド
プロテクションも、不満のないものだ。
トップ6速だと4000rpm ≒ 100km/h、
同 5000rpm ≒ 120km/h、
6000rpm ≒ 140km/hと、
1000rpmにつき、約
20km/hずつ増速していく。
アクセルを開け続けると、
190km/hまで目盛られたスピードメーターを、
使い切ったところで、速度リミッターが
作動する。
その時、タコメーターの針は
8000rpmを指し示す。もちろん、
車体安定性に不安はない。
80~100km/hから普通にアクセルを
開けていったときの加速はスムーズ。最近の
リミッタースポーツと比較すれば、その速さは、
時代を感じさせると言わざるを得ない。15年の歳月は
やはり大きい。ただ、これくらいでも
いいかなと思う...。
【楽しめる範囲が広い...】
今回は、高速コーナーを、ハードに攻める
ような、試みはしなかったが、そこそこのレベル
でなら問題なくこなす。ワインディンでも
ハンドリングは、ニュートラルで、曲がりやすく
スムーズなコーナリングが可能だ。
リーンウィズで、中回転域を使っての、コーナリングは、
穏やかである。
A12モデルから、フロントブレーキキャリパー
が、6ボットタイプを用いるなど、グレードアップ
されたが、ブレーキは、前後ともに
ちょうどいい効き具合で、コントロールもしやすい。
ただし、街乗りから感じていた前後
サスの柔らかさが、ワインディングをスポーティに
走り始めると、ちょっと、気になって
くる...。
コーナー進入時、それほどハードな
ブレーキングをしていないのに、フロントの沈み
込みが大きく、立ち上がりでアクセルを開けた
ときの、フォークの伸びも大きい。
もっとダンパを効かせたい、そして、A12モデルから
グレードアップされ、ガスショックになって
いるリヤサスも、スプリングは、それほど
柔らかくないが、ダンピングフォースが、もう
少しほしい感じだ...。
とはいえ、普通にコーナリングを楽しむ分
には問題ないレベルであり、大型初心者など
不特定多数のライダーが乗ることと、街乗りや
ツーリングのほか、幅広い用途に使われる
ことを、考えれば、これくらいでいいと言える
のかもしれない。
エンジンも、スポーティに
走った場合、シャープな吹き上がりを高回転に
おける力強さが欲しいと感じるが、15年前に
造られたエンジンであり、しかも、国内仕様で
本来の性能が抑えられているとうことを
考え合わせれば、納得できるものである...。
1日300kmほどの、ツーリング的な試乗をして
思ったのは、オーソドックスなスポーツ
モデルとしていい感じだな、ということ。
高速道路も快適に走れるし、楽しめる範囲が深くは
ないが広い...。
ZX-9Rをはじめとする近頃の
高性能車と比較してしまうと、今やスーパー
スポーツ的なところは見当たらない、しかし、
定番的なスポーツモデルとして評価できるし、
大型初心者にも薦められる。
「ニンジャ」の魅力の1つは、個性的で
変わらぬスタイルにある。そして、今となっては、
次元は高くないものの、バランスが、取れていて
幅白い用途に使えて、楽しめる点も魅力だ。
とんがっていないから。乗っても。ゆったりと
した気持ちで走ることができる...。
どうしても物足りない部分が出てきたら、
自分なりにモディファイすればいい。
「ニンジャ」用のアフターパーツは、
今でも、驚くほど豊富に
ラインナップされているから。それも
楽しみのひとつになるはずだ...。
【根強い人気のまれにみるロングセラーの大型車...】
'72年にデビューしたZ1から10年後の'80年代
前半、カワサキは、新世代のフラッグシップ =
世界戦略車を準備していた、
当時は、Z1から発展して
きた、空冷DOHCバルブのインラインアフォアを搭載
するGPZ1000が旗艦だった。
しかし、さらなるハイパフォーマンス
モデルを生み出すのだ。空冷エンジン
では、限界にきていた。そこで、新設計の
サイドカムチェーン方式のコンパクトな水冷DOHC4
バルブを開発し、新しい世界戦略車に挑戦する。
それが、第2世代のスーパー900であるGPZ900R
であった。最高出力115ps(85kW)/9500rpm
最大トルク8.7kgm(85Nm)/8500rpmの性能は
いうまでもなくトップレベルで、最高速度250km/h
900cm3(cc)で
ありながら、並み入るリッタースポーツ
を凌駕する性能が与えられていた。
また、エッジを効かせた
スタイリングのデザインも魅力で、
その後、発売された兄弟車GPZ750Rとともに、
”ニンジャ”の愛称で人気を得る。
当時、オーバーナナハンの国内販売は、自主規制され
ていたが、「逆輸入」と言う形で、国内でも900
ニンジャの姿を、目にするようになる。
'86年には、自身の発展型である、GPZ11000RXに
最速の座を譲ることになるが、
映画『トップガン』で、主人公のトム・
クルーズが駆り、映画の大ヒットとともに、脚光を
浴びたことも、追い風となった。
後には、さらに2X-10が
登場し、ニンジャ自身も'88年製で、最高出力が
5psダウン。'90年には、超高性能スポーツZZ-R1100が
リリースされ、カワサキの旗艦モデルの完全なる
世代交代が行われた。
しかも、「ニンジャ」の人気は、根強く、'90年(A7)
にフロントホイール径を、17インチとし、フロントに
異径4ポットキャリパーを装備するなど、ブレーキ
まわりも強化。
最高出力は108psまで抑えられているが、
問題視されることはなく、翌'91年には、国内に
おける人気に対応して、国内版の発売が開始された。
その後、カワサキの第3世代の900スーパー
スポーツとなるZX-9Rも出現。加えて他メーカーからも、
続々と新しい高性能スポーツが市場に投入されて
きている、
それでも、「ニンジャ」の人気は、衰えること
を知らなかった、ここ数年も、大型車の販売台数の
上位10位以内にに入っており、根強いファンに
愛され続け、大型車では、まれにみるロングセラー
となっている...。
これまでの、累計生産台数は、約6万5000台。人気の
理由は、変わらぬ個性的なデザインと、基本的な
作りの良さにある。
現行モデルのA12から
ラジアルタイヤが、標準装備となり、フロントブレーキに
6ボットキャリパー。リヤサスにガスショックが
採用され、チェンジペダルも、ショート化されて、
進化熟成が図られている。
排ガス問題などで、今後の動行が注目されているが、
GPZ900Rは、二輪史の残る1台と言って
差しつかえないだろう...。
備考:この内容は、
平成12-3-15
発行:八重洲出版
「MOTOR CICLIST」
より紹介しました。