泣けるシリーズ「あなたともう一度」...その1 | Q太郎のブログ

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秋の登山、服装選びに迷ったら? レイヤリングの基本と秋 ...

 

 

 

 来るんじゃなかった、日曜の

 

デパートなんか...。

 

 

 

 

 エスカレーターのステップを降りながら

 

千賀子は、ぼんやりと後悔を感じ始めていた、親子

 

連れや、若いカップルが行き交う中で、

 

ザックを背負った山歩きの姿の自分が、周りから浮いている

 

のは、嫌でもわかる。婦人服売り場の隅にある

 

ベンチに腰を、下ろすと、張り詰めていた心が

 

ふうっとしぼみ、ふくらはぎや、肩に

 

たまっていた疲れが、どっと押し寄せてきた。

 

 

 

 ふと、顔を上げると、売り場の大きな鏡に

 

映る自分が、目に入った...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 白いピケ帽に、小花模様のシャツ。

 

市街sンを避けるためのファンデーションを厚塗した妙に

 

白っぽい顔。その姿は、どこの観光地に

 

行っても、わんさかいる初老の女性そのものだった。

 

 

 

 

 

昔から「あんな風には、なりたくない」と、

 

密かに思い続けてきたのに、「女の人」でも、

 

「おばあさん」でもない。中途半端に脂ぎった感じが、

 

人生に対して欲深そうで嫌になる...。

 

 

 

 

 先月千賀子さんは、60歳になった。

 

そして、夫の壮一郎は、千賀子さんより、2年早く還暦を迎えて

 

いる。

 

一人娘の雪絵は、3 年前に結婚して、

 

家を出たので、今は、夫婦だけの暮らしを送っている、

 

 

 

 

 2人が、結婚してから、ちょうど35年になる。

 

千賀子は、若い頃、こんな風に信じていた。

 

 

 

たとえば、2人とも60歳を過ぎれば、

 

水墨画のような穏やかな老夫婦になれるのだと。けれど、

 

いざ、その歳になって見ると。千賀子は、

 

あっさり枯淡の境地に入れず、自分の老いを認める

 

事もできずにいる。だから、さっきのように

 

ちょっとしたことで、腹を立ててしまうのだろう。

 

 

 

 居心地の悪い気分を、抱えたまま、

 

わけもなく、携帯電話を取り出してみる。

 

着信はなかった。

 

自分は、誰からも、求められていないのだ。

 

もちろん夫からも。千賀子は、やぶれかぶれな思いで、

 

携帯電話の電源を切ってしまった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「お前も、老けたなぁ...」

 

 

 

 休日の登り電車は、夕方の4時を

 

境に、行楽地帰りも客で混んでいた。並んで、つり革に

 

捕まっている時、ふとこちらへ向き直った

 

夫から、しみじみと言われた。

 

 

 

 体も心も歳を重ねたのは

 

わかっていても、夫から改めて、こんな風に

 

言われて、頭が、かっと熱くなった。

 

 

 

 

「そりゃ、あなたは若くて元気よね。

 

あんな山歩きは、わけもないでしょうねよ。でも、だったら

 

こっちに合わせて、もっとゆっくり歩いて

 

くれたっていいでしょう。あれじゃ、1人で参加した

 

みたいだったわよ。ほかのご夫婦は、

 

みんな2人で歩いているのに...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 千賀子と壮一郎は、シニア向けの

 

1日、トレッキング体験教室に、でかけて来たのだった。

 

 

 

壮一郎が、会社を定年退職してから2年。

 

気がつけば、ぼんやりしていることが多くなった夫を

 

励ましたくて、区役所でポスターを見つけた

 

千賀子が、渋る壮一郎を、なんとか誘い出した。

 

 

 

壮一郎は学生時代、1年の半分は、山岳部仲間と

 

沢登りに明け暮れる生活を送っていたという。

 

 

 

社会に出てからは、すっかり遠去かって、しまっていたが、

 

若い頃から好きだった、山の空気を吸えば、

 

うつろな夫の瞳に、少しは輝きが戻るかも

 

しれない...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の参加者は、千賀子たちのほかに、

 

中高年の夫婦が3組と、女性4人のグループが1組

 

だった。

 

 

 

 電車で2時間足らずで行ける東京近郊の

 

山だが、林道に入ると、空気は思いがけず冷たく

 

澄んでいて、足元には、幼い頃に見たきりで

 

忘れていた、野の花がひっそりと咲いている、千賀子

 

の心は軽くはずんだ。

 

 

 

 

 壮一郎は、よく言えば、シャイ。悪い言えば、

 

ぶっきらぼうな男だし、あからさまに、うれしそうな

 

表情などは、言えはしないだろう。でも、

 

 

 

「着てよかったでしょ?」

 

「ん、まあな」

 

なんて何気ない言葉を交わしながら

 

2人で歩ければ十分だ。

 

 

 

千賀子は、そう割り切っていた...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 けれども、そのささやかな期待も、壮一郎の

 

思いがけない行動で、すぐに裏ぎられた。昔の血が

 

騒いだのか。千賀子からも、参加グループからも、

 

離れて1人で、どんどん先に歩いていって

 

しまうのだ。

 

 

 

 

 千賀子が、ぬかるんだ道に足を滑らせたときも、

 

そばを歩いていた夫婦は、心配してくれたが、

 

夫は、そこにはいなかった。

 

 

 

そして、昼食の時、泥だらけになった妻のトレッキング

 

シューズを見て、

 

「そそっかしいな」と、

 

一言 もらしただけだった...。

 

 

 

 

 

 山を降りる道すがら、

 

「ご主人、お元気ねぇ」と、ささやかれたのを、

 

思い出した。やっかみかもしれないが、

 

今、考えると、あの言い方には、

 

「夫婦で来てるのに、最後まで

 

置いてけぼりなのね」という、ニュアンスが

 

含まれていたきがする。そして今は、「老けた」

 

という夫からの言葉...。

 

 

 

 

久しぶりに体を動かした

 

疲れも相まって、千賀子は、あふれだす気持ちを、

 

もう心にとどめて置くこが、出来なかった。

 

 

 

 

「山に誘って悪かったわ、ほかの

 

ご夫婦みたいに、仲良く歩くなんて、うちには、もともと

 

無理だったのよね。どうせ、私なんかとじゃ、

 

嫌でしょうよ、私みたいなおばあちゃんとじゃね!?」

 

 

 

「そういう意味じゃない...」

 

 

 

 壮一郎が、何にか言いかけたところで、

 

電車が、次の駅に停まった。千賀子は、夫に背中を向けて、人を

 

かきわけて、さっさと、ドアのほうへ歩き出す。

 

 

 

「どこ、行くんだ?」

 

 

 

「私だって、好きなとこに行くわよ!」

 

 

 

千賀子は、こんな捨て台詞を残して、

 

1人で、電車を降りてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 家にたどり着いたのは、7時になろうとする

 

ところだった。鍵を開けて玄関に中に入ると、

 

千賀子は、事さらに明るく、

 

 

 

「ただいま~!」と、

 

電気のついている居間に向かって声をかけた。

 

 

 

 人工的な笑い声が、

 

かすかに聞こえる。夫がテレビで、

 

クイズ番組でも、見ているのだろうか...?

 

 

 

 

 結局、デパートでは、地下の食品売り場で、

 

壮一郎の好きな老舗店の和菓子を買っただけだった。

 

 

 

久しぶりに、服でもパッと買ってやろうと

 

しばらくうろついたが、

 

「そういえばあの人のスーツ、

 

クリーニングに出しておかなきゃ」などと、

 

夫のことばかりが気になって、引き上げてきたのだった。

 

 

 

 

今日は疲れたし、2人でお寿司でも食べに行こう、

 

意地っぱりな壮一郎はきっと、さっきの

 

失言を謝ったりしないだろう...。

 

 

 

 

 

それでも、構わないと

 

千賀子は思った。

 

 

 

自分も、子供じみたことを、

 

してしまったんだし、

 

今回は折れてあげよう。

 

 

 

そうやって私たちは、また日常に戻っていく。

 

凪いだ毎日に、少し波風を立ててしまった今、

 

いつもと同じ生活を、また、始められることに、

 

千賀子は、ささやかな喜びを感じた...。

 

 

 

 

 居間に夫の姿は、なかった。たばこでも、買いに

 

行ったのだろうか? 

 

 

 

 少し拍子抜けしながら

 

テレビを消すと、部屋の静けさが、妙に気になった。

 

けれど、その中で、かすかだが、やけに耳につく

 

音があった、不規則な息づかいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あなた?」

 

 

 

いやな胸騒ぎを感じて、千賀子は部屋の周りを

 

グルグルと、歩き回った。そして、まさかと思いながら

 

ソファーの後ろへ回り込むと、

 

 

 

ダンガリーシャツの

 

背中が、目に飛び込んできた。壮一郎が

 

うつ伏せに倒れている。千賀子は、小さく叫び声を上げ、

 

夫の肩に手を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叫ぶ女性 の写真素材・画像素材. Image 97072359.

 

 

 

「あなた...

壮一郎さん...

しっかりして!」

 

 

 

 壮一郎の体は温かく、首筋に手を当てると、

 

しっかりと、脈を感じることができた。でも、

 

だからこそ、千賀子は、心臓を掴まれたような

 

気分になった...。

 

 

 

もしも、この体が、冷たくなってしまったら...

 

 

自分は、どうしたらいいのだろう...?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

備考:この内容は、

2011-1-9

発行:泰文社

著者:原案:水森野露

   小説:田中夏代

リンダブックス

「99のなみだ・空

涙がこころを癒やす短編集」

より紹介しました。