それにしても、図々しい若者が多いな。
金もらって、なおかつ、心地よくならなきゃいけない
というんだから、「おめかけ」さんだって、もっと、
大変な仕事だよ。
それを、普通の仕事で、金を
もらって心地よくという根性が、たまらないね。
本当は、就職なんてできなねぇだろう、てやつが、大手を
振って就職できてしまう時代だから、
こんなふざけたことを、言い出すんだ。
どこの国の労働者だって、食べるために
仕方なく働いているわけだろう、日本の若者は遊ぶ
ための資金稼ぎのアルバイト先には、ことかかない。
仕事がきつかったら、すぐやめりゃいいんだ
からね。全く働きたいときに働き、遊びたいときに、
遊ぶというマルクス先生の考えた理想社会が、
このニッポンで、実現したんだよ。
オイラの就職のスタートは、浅草の
スト●ップ小屋、フランス座のサラリーマン。照明係。
でも、結局、自分が入りたいとか、そこで
夢がある所にいれば、踏まれようが、謝られようが、
何されても、いるもんだよ。
オイラのお笑いの弟子に、
「お前、生きがいは、何だ?」と、聞いたら、
「そんなこと、考えているヒマ、ありませんよ!」
って、言われるって。
1日も早く、這い上がりたいと
思っているだけだもの。
「元気が出るテレビ」で、”東大に入ろう!”
って、いう企画をやって、東大を目指している
連中をいっぱい集めた。
みんな必●になって、勉強
しているヤツばかりなんだ。
そいつらには生きがいも
くそもない。初めっから
疑問がないんだ。
そんなこと、どうでもいい。
ところが、もっと、落ちちゃって、
大東文化大学とか、どっか適当に
入れねぇかな? と、思ってる
ヤツがいる。
そいつらは、うるさいんだよ。生きがいとか。
学校ばっかりが、人生じゃない
とか、妙な理屈を、もう、何でもにいっぱい知っている。
ダメなやつほど、理由はいっぱいあるんだね。
いいやつには、全然、理由は無いんだよ。
オイラも、貧乏だったけど、好きなことをやるから、
好きな事以外で、金はほしくないと
思っていたから、必然的に貧乏なだけだった。
好きなことをやるためには、あえて、コメ代以外
には、働かない、
かえって、そのほうが、餓●にするまで
耐えるんだ。コメを、みんな食っちゃって、最後に、下に
敷いている新聞紙の裏まで見たら、コメ粒があった。
それを、まとめて取って、かっぱらってきた
シャケの缶詰の、中身を半分出して、ご飯を
そこに入れて、炊いちゃったりしたんだよ。
他人が見たら、みじめだなぁ、と思っても、本人は、
みじめじゃないんだ。貧乏だって、何のための貧乏かって、
いう問題がある。
ほんのつい最近というか、それこそ昭和9年、10年
ぐらいなんていうのは、日本でも、農村は
大飢饉で、もう娘は売りに出すわ、
とんでもない貧乏があった。
ひどいときになったら、子どもを●▼■して、売って、
食っちゃってるんだから、そういう
修羅場から、なんだか知らないうちに
暖衣飽食の時代になっちゃったんだから、若者が弱く
なるのも、当たり前だよ。
だから、貧乏の差があるなんて、
妙な不満に、なるんだね。
ところが、片方は、ものすごくいい生活で、
こっちは、自分の娘まで売って食べているような貧富の差の
あるときは、貧乏でも、たくましく生きられる。
それが、今の子どもは、「あいつは、コンピューター
ゲームのソフトのいいのを買ったけど、オレは
買えない。自●しようと」、って、そのぐらいで、弱くて
●にやすい。
要するに、貧乏の差っていうのは、圧倒的な差
だったら、問題ないけど、今ぐらいの、手が届きそうな
差っていうのが、危ういんだよ。
もしかすると、富の方に、なるんじゃないかってぐらいの差、
それは、手に届きそうか、持ってないかぐらいの
差が、一番危ない、ジェット機を持てて、オレは
持ってないって言うんだったら、ショックでも、
なんでも無い...。
サラリーマンというのは、他人が課長に
なりゃ悔しがるけど、社長になっちゃうと、悔し
がらない。あらゆることがそう。ちょびっと上に
出ることが、一番憎たらしいんだよ。ちょびっと
差があると、大喧嘩になったり、●し合いになる。
明治生まれの我々の父親とか、母親ぐらいの
世代は、そういう圧倒的な差のある時代を
過ごして、なおかつ、関東大震災があって、東京
大空襲があってと、いう中を生き抜いてきた。
ところが、そういう人たちのほうが、社会とか生活に
不満を言わないんだよ。
おふくろなんか、「今はいい時代になったね」、
としか言わない。昔、貧乏してたときも、
「いいんだよ、これで、暮らせるんだから...。
親子3人、ちゃんと、暮らせれば」って。
ホントは、ちゃんと、暮らせてねぇんだよ。飢え●に、
しかかっているんだけど、暮らしてるって、
言い聞かせて生きてきたんだ。
だから、社会に不満とか、
いっさい、言わないものね。
そういう人たちが、残してきた財産に対して、
今、バカヤロウどもが、不満たれてるわけ
じゃないか。そんなものを、何で、わざわざ取り上げて
やらなきゃいけないんだ。
よくもっと、意見を聞いてくれれば、とかいう
やつがいるけれどもさ、それはお前の意見が
くだらないからであって、聞く必要が無いからなんだよ。
だいたい、文句を言うと、わかっていて、誰が
聞きに、行くんだ...!?
備考:この内容は、
平成6-9-15
発行:新潮社
著者:ビー●たけ●
「みんな自分がわからない」
より紹介しました。