【うるさい弟...】
弟が、消えてしまいました。きょう、
直子さんは、弟を、きつくしかったので、
すごく、気になっていました。
夕食の後、弟は、すごく、うるさかったのです。
「ははは。スゲー! あはは!」
弟は、1人で、はしゃいでいるようでした。
弟の隣の部屋で、勉強をしていた
直子さんは、たまったものではありません。
「ちょっと、静かにしてよ!
あした テストなんだから!」
「うぉ~、信じらんね~!」
直子さんの怒った声も、まったく
届かないのか、弟は叫んでいます。
「また、ファミコンね? 静かにしないと、
ソフト取り上げちゃうわよ!」
イライラした直子さんは、弟の部屋へ
ドアをノッックもせずに、突入しました、
「うひゃは、うひゃ、うひゃ!」
見ると、弟は、ベッドの上で、
転げ回っています、
「なに、さわいでんのよ!?」
「あっ、姉ちゃん」
弟が、なにか、手に持っていたものを、
サッと、隠しました。
「万華鏡・岩崎宏美」
「何よ、それ?」
腕をつかんで、取り上げると、丸い筒です。
「返せよ! それ、まどかちゃんから
もらった万華鏡なんだから...」
弟は、直子さんに、つかみかかってきました。
「こんなもの! 私が、勉強
してるのに~!」
直子さんは、万華鏡を、部屋の角に叩きつけると、
腹立たしい気持ちで
立ち去りました。
「うえ~ん!」
弟の鳴き声が、後ろで聞こえていました。
しかし、それも、しばらくすると、
静かになってしまいました。
あれから3時間経った今、
弟の姿がありません。もう、夜中の12時過ぎです、
お父さんや、お母さんは家の近所を
探しに、出かけました。
直子さんは、消えた弟の部屋に
いました、意地悪なことをした自分に、情けない
気持ちでいっぱいです。足元には、
投げつけた万華鏡が転がっていました。
直子さんは、それを手に取ると、
そっと、のぞいてみました。色とりどりの
きれいな模様が見えます。
「あっ!”」
次々と変わる世界に、直子さんは、
めまいを感じてしまいました。
のぞいた万華鏡のなかに、
小さくなった弟がいたのです。
「うわ~い!」
弟は、笑っています。
そして、
いつまでも、
クルクル回り続けています...。
備考:この にゃい容は、
1995-8-5
発行:KKベストセラーズ
著者:滝口千恵
「こどもの読めにゃい童話」
より紹介しました。