この技を使ってはいけない!
ヒーローの飛行。
空想科学世界では、ヒーローが空を
飛ぶには、極めて当たり前、日常的な行為
である。
おそらく、赤いマントをなびかせる
アメリカのスーパーマンが、イメージ的な
元祖なのだろうが、「翼もないのに
空を飛ぶ」というパターンを確立させたのは、
やはり、ウルトラマンだ。
偉大な人である。
以降の連中は、もう平気で飛ぶ飛ぶ。
スペクトルマンなど、各種ヒーローも、
コン・バトラーVなどの各種ロボットも、
ロボコンやドラえもんさえも、ホイホイと
飛んでしまうのである...。
彼らはなぜ、飛べるのだろうか?
ウルトラマンの場合、番組内には明確な描写
がなく、いまいち、ハッキリしないが、
多くのロボットは、足についているブースター
からの噴射で飛行する。
また、ドラえもんの
タケコプターでさえ、理論的に納得
いくような気がしてしまう。ヒーローや
ロボットの飛行には、一応の説明が
されているものが多いのである。
しかし、それで、彼らは本当に飛べるのか?
ブースターやプロペラがあれば、
翼がなくても、空を自由に飛び回り、
さらには、空中での殴り合いや、斬り合い
さえも、出来るというのだろうか...?
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【役に立たない2つの方法...】
空を飛ぶには、
① 気球のように空気の
浮力を利用する方法、
② ロケットやヘリコプターのように、
空気や燃焼ガスを吹き出して
反作用を利用する方法、
③ 飛行機のように
空気の揚力を利用する方法、
④人工衛星のように、地球を
周回する遠心力で飛ぶ
方法、
この4つがある。
空気の浮力を利用して飛ぶ者は、空想
科学の世界にはあまりいない。
『ウルトラQ」の怪獣バルンガと、「秘密戦隊
ゴレンジャー」のバイリキキューンくらいだろう。
気球は速度が遅く、天候の変化に弱いと
いう、致命的な欠陥を持っている。
風が拭くけば、どこへともなく流され、雨に打たれれば、
地面に落ちて泥だらけになる。
自分の事で精一杯で、とても戦う余裕
などない....
また、遠心力で地上近くを飛ぶには、
秒速7.9km = マッハ23を、出さなければ
ならない。
これは、1時間24分で、地球を
1周する速さである。敵を発見しても
アッという間に通り過ぎてしまって、なかなか
戦うことが出来ない。
遠心力で飛んでいるのだから、
停止したり、速度を
落としたりすれば、たちまち地面に激突
である。
一度、通り過ぎてしまったら、
そのまま地球を、もう1周してくるしかない。
1時間24分後、敵は同じ場所で待っていて
くれるだろうか?
要するに、空想科学の世界で生きる者に
とって、この2つの方法は、まったく
役立たずなのだ。
ロボットやヒーローが
空を飛ぶための方法として考えられる
のは、反作用か、揚力ということになる...。
備考:この内容は、
2018-11-30
発行:KADOKAWA
著者:柳田理科雄
「空想科学読本 1」
より紹介しました。