2009年、時点で、JRの特急列車が1本も
走っていない県があるって本当...?
世はまさにスピード時代。1分1秒を争って、
先へと進むといった人ばかりで、なんだか余裕の
ない世の中だと、感じられるけれど、100年に1度と
言われる大不況を乗り切るため、皆、必●
なのだろう...。
交通機関も当然、そんな時代だから、
スピードが優先される。
鉄道ならば、新幹線に特急列車、バスならば、
高速バス、船旅は高速船といった具合だ。
時刻表で、JRの在来線を観てみよう。地方の
幹線、例えば、日豊本線や、北陸本線などは、
特急列車ばかりが目立つ。普通列車は、特急列車の
本数に比べれば少ない。そして、急行列車と
なると、見つけるのにも苦労する。
都市部を除き鉄道では、「特別急行列車」
である、「特急列車」が、一般の人が乗るごとく普通
の列車で、「普通列車」は、高校生の通学用と
いった使われ方しか、されていないようだ。
ところが、そんな特急中心の時代にあって、
JRの特急が、1本も運転されていない県がある
のを、ご存知だろうか?
「それは、JRのない沖縄県だろう?」
と言った声が聞こえてきそうだが、これも、
間違いではない。しかし、JRの路線があるにも
かかわらず、特急列車が1本も走らない県が、
2つほど存在する。(2009年時点で)
その答えは、1つ目は、奈良県。
時刻表の「さくいん地図」を見ると、
奈良県内には、関西本線(大和路線)、桜井線、和歌山線
といったJRの路線があることがわかる。
れっきとした本線まで、走っているのだ。
それでは、「さくいん地図」の、次に掲載されている
「特急運転系統図」を、ご覧いただきたい。
みごと、奈良県のあたりが、特急空白地帯と、
なっている...。
いったい、なんでこんな特急空白地帯となって
しまったのだろうか? 奈良県内では、モータリー
ゼーションの影響で、鉄道を利用する人が
少ないのだろうか?
その秘密も「さくいん地図」に、
隠されている。
そう、県内には、JR線の数以上に、私鉄の
近鉄(近畿日本鉄道)の路線が、縦横無尽に走って
いる。そして、多くの路線で、座席指定制の
有料特急が運転されているのだ。それも、1日に数本
とかいうような、ケチなものではない。
路線によれば、15分間隔で、特急列車が走っている。
つまり、この地域では、近鉄線がメインに
利用されているというわけだ。
当然、観光客も、近鉄特急を利用する。
JRの特急列車など、出る幕もないということなので
ある...。
一例をあげるならば、京都ー奈良間(その
ほとんどの区間が、京都府内だが)。近鉄・京都線
(西大寺ー近鉄奈良間は、近鉄・奈良線)と、JR
西日本・奈良線(木津ー奈良間は、関西本線)が並行
して走っているが、観光客の多くは、近鉄を
利用する。
面白いことに、JRグループの1つ
JR東海の発売する企画きっぷで、新幹線で京都
まで行き、そこから近鉄特急で、奈良へ向かう
ものが、売られている。
奈良付近では、いかに、近鉄が、中心的な交通
機関であるかは、おわかりいただけよう...。
しかし、JR西日本も、手をこまねいて見て
いるわけではない。かつて、全線が単線だった奈良
線も、一部複線化と高速化の工事が完了、京都ー
奈良間に「みやこ路快速」などを運転し、
巻き返しを狙っている。
2つ目は、広島県、意外かもしれないが、
平成21年3月に、山陽新幹線と並行する、山陽本線で
唯一残っていた寝台特急「富士・はやぶさ」
(東京ー大分・熊本間)が廃止となり、県内を走る
在来線特急は、定期列車に関しては
消滅した。
ただ、新幹線の列車も、JR特急の一種と、
捉えられる。そういう視点で見ていけば、広島
県は、敗者復活(?)を、遂げるのであった...。
備考:この内容は、
2009-11-30
発行:KKベストセラーズ
「つい誰かに教えたくなる鉄道雑学」
より紹介しました。