山田久志「18.44mの闘い」... | Q太郎のブログ

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プロ野球仰天伝説38】初の開幕投手&日本一なのに引退も考えてい ... 

 

 

 

 現役時代、山田はクレバーな選手だ、とよく

 

評価された。どんなピンチにも動ぜず、冷静沈着に

 

バッターを押さえてしまう。そう評価されたが、

 

とんでもない。一生懸命冷静を、装ってきたにすぎない

 

だけで、一種のポーズであった...。

 

 

 

 

 マウンドとバッターボックスとの間は、距離に

 

して18.44mある。ピッチャーと

 

バッターは、その距離を、はさんで対峙し、互いに技と力、

 

頭脳を駆使して闘う。闘いである以上、気迫が

 

大事で、いくら素晴らしいボールを持っていても

 

弱気になったら、まず絶対に勝てない。

 

 

 

 だから、表面上は、

 

冷静な顔をしていても、心の中は別だった。

 

元来、気性の激しタチで、「この野郎、打たれて

 

たまるか!」とカッカ燃えて、バッターに向かって

 

いった...。

 

 

 

 

 相手が、長島さんや、王さんのような、大打者であろ

 

うとも、変わらない。常にバッターに向かっていく。

 

 

 

 怖いもの知らずで、140km/h台のスピードボールを

 

がんがん投げていた若い時は、もちろん、

 

ストレートが、120km/h そこそこしか、出なくなった

 

引退間際でも、この気持ちは、一度として無くした

 

ことはなかった...。クソッ、押さえてやる。闘志を

 

かきたて、必○になってバッターに向かって行った。

 

 

 

 

 ではなぜ、気性そのまま、闘志を、かき出しに

 

して投球しなかったのか? それは、僕のピッチャー

 

哲学が、許さなかったからだ。ピンチになろうが、三振の

 

山を築こうが、いつも、普通の表情で投げる。

 

 

 

それが、プロのピッチャーであり、チームのためにも。

 

自分のためにもプラスになると、信じていた

 

のである...。

 

 

 

 

 僕は、この哲学を、阪急ブレーブス(現・オリックス

 

ブルーウェーブ)に、入って学んだ。阪急にドラフト1位で

 

入団したのは、昭和44年。

 

 

 

 西本監督の指導で、お荷物と言われたチームが

 

強くなり始めたころである。その頃の阪急には、

 

米田さんや梶本さん、足立さんなど、

 

リーグを代表する、そうそうたるピッチャーが、

 

そろっていた。

 

 

 

 どんな投球を、するのだろう? ベンチで、立たずを

 

呑んで見ていると、米田さんらは、打たれようが、

 

押さえようが、いつも、当たり前と言う、表情でボールを

 

放っている。今の若いピッチャーのように、

 

三振を取ったらガッツポーズ、打たれたらガックリ

 

といった浮わついた態度は、つゆほども見せ

 

なかった...。

 

 

 

・・・やはり、本物の、ピッチャーは違う。

 

 

 

 プロに入ったばかりの僕は、試合を取り仕切って

 

いるのはオレだと、言わんばかりのエースの、堂々とした

 

姿にいたく感動した。プロフェッショナルな投手は、

 

かくあるべきだと、無言で教わった気が

 

したのである。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山田久志 プロフィール|講演会・セミナーの講師紹介なら講演 ... 

 

 

 よく言われるように、野球はピッチャーが

 

ボールを投げないことには、始まらない。審判が、プレー

 

ボールを宣告し、ピッチャーの手から、ボールが

 

離れて初めて、ゲームはスタートする。

 

 

 

 1つひとつのプレーにしても、同じ。ピッチャーの

 

1球ごとに、バッターも、野手も反応し、

 

動くわけで、試合を1つのドラマに、例えれば、

 

ピッチャーは、紛れもなく主役だと、言って

 

いいだろう...。

 

 

 

 ピッチャーには、”目立ちたがり屋”や、”お山の

 

大将”が多いと、言われるのも、それゆえなのだが、

 

単なる”目立ちたがり屋”や、”お山の大将”では、

 

とてもエースにはなれない。

 

 

 

 エースである限りは、

 

打たれようと、打たれまいと、米田さんや、

 

梶本さんらのように、堂々としていなくては

 

いけないのである。主役が、場面ごとに、一喜一憂していた

 

のでは、チームが、浮ついてしまうからである。

 

 

 

 例えば、この1球で、試合の勝敗が決まるという

 

場面がある。1点差で勝っていて、9回の裏

 

ツーアウト満塁。しかも、カウントは、ツースリー。

 

ボールなら、押し出しで同点、ヒットならサヨナラ

 

負け。こういう場面に、マウンドに立つのはつらい...。

 

 

 

 出来ることなら逃げ出したい、誰かに助けて

 

ほしいという思いで、いっぱいで、とても平静な表情では

 

いられないのが普通である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サブマリン投法 に対する画像結果

 

 

 

 しかし、主役であるピッチャーが、そこで

 

うろたえてしまうと、野球というドラマは、台無しに

 

なってしまうのである。

 

 

 

 投げる前から、バッターとの

 

勝負に負け、チームの雰囲気まで、おかしくなる。

 

逆に、マウンドの上で、デンと構え、いかにも平気な

 

表情でいれば、バッターにプレッシャーがかかる

 

ばかりか、バックは、「あいつに任せておけば

 

大丈夫だ!」と安心し、ファインプレーで、助けてくれたり

 

するものである...。

 

 

 

 

 入団早々にして、僕は、そのことを学んだので

 

ある。実際に、マウンドに立った時は、ピンチに

 

なるたびに、「久志! 普通にしろ、普通に!」と

 

言い聞かせ、カッカしがちな心を、オブラートで包み、

 

沈着冷静を装いつつ、18.44m先にいる

 

バッターとの闘いに挑んできた、そして、これが、

 

いつの間にか、僕の持ち味となり、284勝へと

 

積み重なっていったのである...。

 

 

 

 

 

 

 

備考:この内容は、

平成3ー6ー1

発行:PHP研究所

「PHP6月号」

より紹介しました。