上田次郎(阿部寛)「どんとこい!超常現象」...その6 | Q太郎のブログ

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絶対に押すな」つったよな、おい - 阿部寛へのボケ[11390792 ...

 

 

【科学との出会い、

そして初めての失恋】

 

 

 

 中学を卒業する頃、私は猛烈な反抗期を迎えていた。両親に言われるまま、

 

幼稚園からエスカレーター式に、進学してきた私だったが、敷かれたレールの

 

上を走るだけでは、納得できなくなっていたのだ。私は、親が勧める推薦入学の

 

話を蹴り、都内屈指と言われる難関公立高校を受験することにした。

 

 

 

 もっとも、”難関” とは、一般レベルの受験生が遣う言葉であり、入ろうと思えば

 

どんな名門にも余裕で、合格できる学力を身に付けていた私には、当てはまらない

 

言葉ではあったのだが...。

 

 

 

 その志望校に楽々と合格した私は、ようやく両親の屁護を離れて、春から

 

の新生活をスタートさせた。入学式当日、私は、拝島駅から青梅線に乗り込み、

 

電車に揺られること15分で、最寄り駅に降り立った。そこから学校まで、

 

さらに路線バスに乗る必要がある。

 

 

 

 しかし、そんな遠さも、私には、心地よい距離感を

 

与えていた。自宅から遠ざかるにつれ、自分が大人になって行くような感慨が

 

湧いてくるからだ。少しばかりのくすぐったさと、ワクワクするような

 

興奮を感じながらバスに乗り込み、緩やかな揺れに身を任せていた...。

 

 

 

 そんな時、私は、カノジョと出会った...。

 

 

 

 すべてが、スローモーションだった。道路に飛び出す子犬。慌ててブレーキを

 

踏む運転手。激しく揺れる路線バス。急ブレーキに、よろめき私の胸に

 

飛び込んできた彼女。

 

 

 

 そのときの感触は、いまだに覚えている。受け止めた彼女の肩は細く、強く

 

抱きしめたら壊れてしまいそうなほど華奢(きゃしゃ)だった。三つ編みに結った髪からは、

 

リンスの香りがした。

 

 

 

「ありがとうございます」。

 

 

 

そう言いながら私を見上げた彼女。目が合った

 

瞬間、私、上田次郎は、人生、初めての恋に落ちていた...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女は、同じ高校の新入生だった。入学式の間中、私は、隣の列にならぶ

 

彼女の後ろ姿ばかりを眺めていた...。

 

 

 

 それから数日間、私は彼女以外のことは、すべてどうでもよくなっていた。

 

学校に行けば、ただ彼女の姿を探し、家に帰れば彼女のことをひたすら思った。

 

何とか会話するきっかけは無いものか? と頭を悩ませていた時、「チャンス」は

 

やってきた。

 

 

 

 入学してから1週間後、各部活は新入部員を受け入れる仮りの入部期間

 

であった。「同じ部活に入れば、会話も自然とするようになるはず」。

 

そう考えた私は放課後、彼女の姿を追った...。

 

 

 

 夕映えの化学実験室、彼女はそこに、たたずんでいた。周囲には、教師と

 

上級生だろうか? 数人の男女の姿が見える。彼女は、知的好奇心に目を輝かせ、

 

教師の言葉に熱心に耳を傾けている。彼女は、科学部に入ろうとしているのだ。

 

 

 

 私は、翌日、さっそく担任に入部届けを提出。今まで距離をおいて眺めるだけ

 

だった彼女との距離は、これでぐっと近づくだろう。彼女は、バスで一瞬

 

触れ合っただけの、私のことなど覚えていいるだろうか? いや、覚えていて

 

くれなくてもいい。これから、ゆっくりお互いのことを、知っていけばいいのだから...。

 

私は、その日の放課後、彼女がいる化学実験室へと向かった...。

 

 

 

...いや待てよ、このまま彼女と面と向かって、何を話せばいい? もし何も

 

言葉が出てこなかったら、暗い科学オタクと思われてしまうかも知れない。

 

ここは、念入りにイメージトレーニングをしておく必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

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 何はともあれ、まずあいさつだろう。

 

会った時の、第一声は、非常に重要だ。

 

 

 

「やあ、はじめまして、僕、次郎。君は?」と軽いノリでいくか?

 

だめだ、これでは単なる軽薄男と

 

勘違いされてしまう可能性がある。では、これなら

 

どうだ?

 

 

 

「どうも、はじめまして 私が上田次郎です。あなたのお名前を、教えて

 

いただけますか?」

 

 

 

待て、次郎! かしこまり過ぎだ。下手をすると、堅いだけで

 

つまらない男という、堅苦しい印象を与えてしまうかもしれない。

 

それならむしろ、

 

挨拶などという堅苦しいものは抜きにして、

 

 

 

 

 

 

 

アルマエロマエ阿部寛 に対する画像結果

 

 

 

「オレについて来い!」的な男らしさを

 

アピールしたらどうが?

 

 

 

すると、彼女は、頬を赤らめながらこう答える。

 

 

 

「次郎様、バスでお目にかかって依頼、ずっとあなたのことが...」。

 

 

 

「いや、みなまで言わずとも良い」。

 

 

 

「ああ、次郎様」。

 

 

 

そして2人は、お互いを抱き寄せると、静かに目を閉じ...。

 

 

 

などと空想をしている間に、私はいつの間にか、化学実験室に立っていた。

 

そして、気づくと部屋には、彼女と2人きり。いきなりそんなシチュエーションに

 

置かれた私は、それまでのシミュレーションなど、一瞬に吹き飛んで

 

しまった。そして、やっと口をついて出てきた言葉は、ひと言。

 

 

 

「あなたが好きです!」

 

 

 

彼女は、一瞬キョトンとした後、ほぼ間髪入れずにこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

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「私、大きい人はちょっと...」

 

 

 

 初めて女性を好きになったのは、8日前。そして、初めて失恋を経験するまでに

 

要した時間は、198時間と42分だった。結局、彼女は科学部ではなく、

 

鉄道研究部に入部したようだが、それは、もはやどうでもいいことだった。

 

 

 

 その時に失恋を、私なりに分析してみた。彼女はおそらく、人格的にも

 

将来の期待度という面でも、”大きい” 存在であった私の、突然の告白に、

 

戸惑ってしまったのだろう。いや、そうに違いない!

 

 

 

 場合によって、私のようにリッパ過ぎるのも考えものだ。

 

相手に嫌がられたり、相手をひどく傷つけたりするケースもある。

 

とにかく、人の大きさというのは、とてつもなく

 

デリケートな問題なのだ...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

備考:この内容は、

2002-11-30

発行:学習研究社

著者:上田次郎

「日本科学技術大学教授 上田次郎の

どんとこい、超常現象」

より紹介しました。