第④位 「機動戦士ガンダム00」
全長5万kmの軌道エレベーターが完成している!
『機動戦士ガンダム00』は、西暦2037年が舞台。
石油や石炭などの化石燃料が枯渇したため、
太陽光発電を行う目的で、全長5万kmの
軌道エレベーターが作られていた。
軌道エレベーターは、現実の世界でも宇宙輸送
システムとして検討されている。地上3万6千kmの
静止衛星からケーブルを垂らし、反対側に
おもりを付けてバランスを取る。
静止衛星は、1日に
地球を1周するため、地上からは、静止している
ように見える。そこから垂らしたケーブルも、
常に地上の決まった点に届く。そのケーブルで、
人や物資を運ぼうという構想だ...。
だが、『ガンダム00』の軌道エレベーターは、
規模が違った。直径10mはあろうかという円筒形で、
その中を、電車のような乗り物で往復
するのである。これは、たしかに300年ぐらい未来に
ならないと、作るのは不可能だろう。資材運搬の
問題を別にすれば、軌道エレベーターの方が、
スペースコロニーよりも、技術的にハードルが高いと思う...。
そのハードルとは、静止軌道から垂らす
ケーブルに使える材料がないこと。鋼鉄の中で最強
のものも、静止衛星から5900km伸ばした
ところで、自分の重さに耐えられず、切れてします。
現在最強な人工物質である「カーボンナノチューブ」
なら、理論上は耐えられるが、残念なことに現状の
技術では、長さが最大で数mmのものしか作れていない。
西暦2307年の『ガンダム00』の世界では、
この問題が解決されていた。カーボンナノ
チューブの20倍の強度を持つ「Eカーボン」が開発
されているという。この強度があれば、直径1cmで
2万4千t の荷重に耐え、16両編成のN700系
新幹線を、33編成も同時に往復させられる。
だが、その建設には、筆舌に尽くしがたい苦労が
あったと思われる。第2話の冒頭のナレーションで、
こう語られたのだ。
「半世紀近い計画の末、
全長5万kmにも及ぶ、3本の軌道エレベーターを
中心とした太陽光発電システムが完成する」。
この「半世紀近い」という表現には、
「それほど長くかかった」というニュアンスを感じるが、
筆者は、とんでもないと思う。50年で5万kmなら、
1年で1千km、1日2.7km、1時間に114m、
1分で2m。びっくりするほど速いじゃん!
西暦2307年の工事現場は、猛烈に過酷・・・
なのかなぁ? 未来の工事関係者の苦労が
しのばれます。
未来なのに「偲ぶ」って変だけど...。
メリー・クリスマス!
備考:この内容は、
2016-3-25
発行(株)KADOKAWA
著者:柳田理科雄
「空想科学読本 17」
より紹介しました。