「俺たちの旅」
【70年代の青春ドラマを語る時、
絶対に欠かせない3作品】
「俺たちシリーズ」といえば、
「俺たちの旅、俺たちの朝、俺達の祭」の、
総称と思われることが多いが、
実際は刑事ドラマ「俺たちの勲章」も含まれる。
これらの作品を企画した、日本テレビのプロデューサー・
岡田晋吉は、中村雅俊がスタッフに話していた大学
時代のエピソードの面白さから、「次は雅俊の学生時代
の等身大の部分を出そう」と考え、大学生の青春を
描く『俺たちの旅』の企画を考案した。
それまで岡田プロデュース作品に深く関わってきた
脚本家の鎌田敏夫は、この発想を聞いて「大学生の
青春ドラマなんて当たらない」と、当初は反対したという。
「俺たちの勲章」
『俺たちの旅』の制作が決定後、主人公の設定作りに迷った鎌田は、
中村に、「『勲章』の2人の関係でいうと強い方をやりたいか?
くっついて行く方をやりたいか?」と尋ねたところ、
中村は「『勲章』は、松田優作さんの後ろから、くっついていく
側だったんで、今度は、逆をやりたい」と話し、
カースケの人物像が決まったのだそうだ・・・。
『俺たちの旅』は、吉祥寺、井の頭公園近辺が舞台で、
修学院大学4年生の「カースケ」こと津村浩介(中村)、
その同級生の「オメダ」こと中谷隆夫(田中健)、カースケの
小学校時代の先輩で、主役トリオ唯一の社会人である
「グズ六」こと熊沢伸六(津坂まさあき)の3人の男たちが
主役。
そして、彼らを取り巻く家族、友だち、恋人、妻、
さらに毎回のゲスト俳優が演じる人々との物語だ。
放送時間の日曜日午後8時は、カースケ役・中村のデビュー作
『われら青春!』も含む「青春学園シリーズ」を放送
していた青春ドラマの伝統的な時間帯である・・・。
1975(昭和50)年10月から始まり、大学卒業、
就職を控えた大学生活の終わりを、半年間で作っていく
予定だったが、番組の人気を受けて半年延長、1年間の
ロングランとなった。
大学卒業後は、カースケとオメダが一緒に部屋を借りて住んでいる
「たちばな荘」の別部屋にいる浪人生、ワカメこと浜田大造
(森川正太)とともに設立した「なんとかする会社」(便利屋の
ようなもの)での出来事を中心に、フリーターの青春が描かれた。
番組の終了後も10年目、20年目、30年目にそれぞれ
後日談が、スペシャルドラマとして作られている。
中村が歌う主題歌『俺たちの旅』のシングルB面で
ある挿入歌『ただお前がいい』が流れる、毎回のラストシーンに
映し出される散文詩も、本作の大きな特徴。
これが、生まれたきっかけは、第1話の脚本にあった。
脚本を読んでみたら中身がなく、何を伝えたいのか
わからないという話になり、「ならば、最後に詩を出して
毎回のテーマを表現しよう」ということになったそうだ。
これは、後続の『俺たちの朝』以降、学園ドラマ
『青春ド真ん中!』『ゆうひが丘の総理大臣』
などに受け継がれていく・・・。
「俺たちの朝」
『俺たちの朝』では、『太陽にほえろ!』のテキサス刑事役を
○職で卒業した勝野洋が主演。彼が演じる主人公・オッスこと
岩崎修治とチューこと田口勇夫、カーコこと
滝村麻子の同居生活が鎌倉、極楽寺近辺を舞台に描かれる。
前作のレギュラーからの継続出演が2人。「津村まさあき」は、
芸名を本作の役名「秋野太作」に改名している。もう1人、森川正太が
ツナギこと佐久間かおる役だ。
主題歌は松崎しげるが歌う『俺たちの朝』で、毎回のラストシーンにもこの
歌が流れた。本作をきっかけに極楽寺に観光客が増加し、
江ノ電の記念切符にも、ワンシーンが使われるなどの
人気で、約1年の放送期間を完走した。
「俺たちの祭」
最終作は、『俺たちの祭』。主演は、再び中村雅俊で、『旅』
のあと、裏番組のMHK大河ドラマ『花神』に出演したが、
その際、大河が終わったら青春ドラマに戻ると
プロデューサーと約束していた。
中村扮する劇団の研究生今城隆之と、壇ふみが演じる劇団の事務員・
北見直子との恋愛模様を交えて劇団員の青春を描いた
ドラマ。
同じ劇団で隆之に想いを寄せるヤッコ、隆之の親友・
ハブ、同じアパートに住むボーヤン、売れない漫画家
みっちゃんと、その恋人など周囲の
人物もユニークで、隆之が歌手としてデビュー
する展開などの面白さがあったものの
視聴率が低下し、約半年で終了した。
1980年代から中村雅俊が
本作の主題歌を歌う際のライブMCでは、
暗いドラマだったので、終了したあとの残りの半年は、
明るい学園ドラマをやろうということで、『青春ド真ん中!』が
できた話を語っている・・・。
備考:この内容は、
2022-1-25
発行:辰巳出版
「日本懐かしテレビ大全」
より紹介しました。