昨年に引き続き、桑田佳祐のツアー日程が
発表された。ファンは、今からワクワクがとまらない
だろうが、初日は、11月2日の宮城セキスイハイム
スーパーアリーナから、全国5大ドームを
めぐるツアーである。
本人のコロナ感染もあり、残念ながら
果たせなかった、この夏の野外フェスの分も含め、桑田の
ライブへの想い、ファンとの逢瀬が、この全国ツアーで、
存分に果たされるだろう・・・。
いったい、どんなツアーになるのだろうか? 今の
ところ、詳細は不明だ。しかし、新型コロナ
ウイルス対策の制約の中、音楽エンターテイメント
への、ポジティブな姿勢が貫かれた昨年の
アリーナツアー『BIG MOUTH,NO GUTS!』の
精神が、今年も引き継がれる部分はあるのだろう。
ならば昨年のことを、少し振り返ってみたい。
マスク着用で、歓声を上げられない客席に
配慮し、それでも、盛り上がれる最善の方法を模索
したのが前回のツアーだった。
オープニング曲は、
『それ行けベイビー!』で、静かな立ち上がりだった。
しかし、それが、普段の歓声にも引けを
とらない、客席からの熱く大きな拍手を生み、
ステージの桑田たちに届き、彼らを鼓舞し、演奏を
際立たせていったのである・・・。
セットリストの進行とともに、好循環が繰り返され、
『BIG MOUTH,NO GUTS!』は、音楽を
「聴く」という原点に立ち返りつつも、希に見る
パフォーマンスの「質」の充実を勝ち取ったツアー
となった。
ライブは、会場ごとの一期一会であることも、
再確認されていった。その典型が「OSAKA LADY
BLUES~大阪レディ・ブルース~」であり、歌詞は、
10都市を回る中、毎回 異なる10バージョンが
書き分けられたのだ。なまじな努力では実現
しないことだ。
どんな場所に出掛けても、地元のスペシャリ
ティー(名物)が、出迎えてくれるのが、旅の醍醐味
なのだが、逆に桑田は、訪ねる場所、それぞれに、
自前のスペシャリティーを持参した形である。
それが、各会場で、その場所ならではの反響を
生んだのだ。
ただ、前回と異なる部分があるとしたら、昨年は
『ご飯味噌汁海苔お漬物卵焼き」feat.
梅干し』という6曲入りEPを引っさげて
のものであったということだろう・・・。
今年に入って 桑田が発表した新曲は2曲。
まずは、桑田自らが出演したSONPOグループ
の新CMのために書き下ろした「平和の街」で
ある。
さらに、桑田佳祐 feat. 佐野元春、世良公則、
Char、野口五郎の ”同級生共演”により、
困難な状況下の子どもたちに、手を差し伸べる
チャリティを実現させ、音楽ファンのみならず、
社会的な話題にもなった「時代遅れの
Rock'n Roll Band」だ・・・。
ただ、ここにさらなるニュースが発表された。
2022年で、ソロデビュー35周年を迎える桑田
だが、これまでの軌跡をめぐる、ベストアルバム
「いつも何処かで」が、リリースされるのだ。今の時代に
聞いてほしい、桑田英介のマスターピースを
集めた作品になるという。
これらの条件が整い、我々が想像するのは、
文字通り、今度のツアーは、いろいろな意味で、
”ベストなものになるのではないか?” ということだ。
果たしてそれが、楽曲的になのか? 2022年
現在の桑田が見せる 今までにない新たな挑戦と
いうことなのか? 何が”ベスト”なのかに関しては、
その時々、桑田の中で、変化していくだろうが、
今回は、会場がドーム中心であり、そこに音楽
のピースフルな空間が出現すること、そして、
今も日々、進化し続ける桑田の新しい何かが
見えることは間違いないだろう・・・。
この35年間、人々を鼓舞し、人々を癒やし続けて
きた桑田の歌、音楽が、常にそれぞれの時代に
寄り添い、そして、2022年の今、現在もいかに
我々の日常と、密接なものなのかが、改めて証明
されるだろう・・・。
備考:この内容は、
2022-9-15
「月刊 ローチケ」
より紹介しました。