道徳・明るい人生「ハイキング」... | Q太郎のブログ

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 8月26日、晴れ。

 

 テントから出た秀夫は、空を見上げた。稲武(豊田市)のさわやかな

 

空気が心地よい。しかし・・・。

 

 

 

 中学2年生の秀夫は、野外教育活動で、地元 名古屋を離れ、昨日から

 

ここ稲武野外教育センターに来ていた。周りの木々は、一面に生い茂り、

 

まばゆいばかりの太陽の光を浴び、一段と色鮮やかだ。稲武は、

 

愛知県と長野県の境に位置し、真夏のこの時期、名古屋と比べて 5、6℃涼しく、

 

まるで別世界であった。

 

 

 

 昨日の飯盒炊さん。班のみんなで作ったご飯やカレー。

 

ご飯はこげ、カレーにいたっては、水分が多く、

 

お世辞にも上手とは言えない出来であったが、みんなで作って食べたカレーライスは、

 

なぜかおいしく感じたものだった。

 

 

 

 その後、一日目の最大の行事であるキャンプファイヤーが行われた。

 

満天の星の下で大きな炎を包み、

 

ダンスや歌を楽しんだ・・・。

 

 

 

 

 

愛知県野外教育センター

 

 

 

 トワリング係の秀夫は、同じ班のメンバーである久美と真由とともに、

 

火の付いたトーチ棒を巧みに動かし、

 

真っ暗な闇の中に、炎の軌跡を描いた・・・。

 

 

 

 沸き起こる拍手。

 

秀夫は、夏休みの暑い中、久美や真由たちと、毎日

 

学校に通って練習をした日々を思い出した。手の皮がむけ、

 

トーチ棒をうまく回す事ができず、何度も何度もみんなと、

 

一緒に練習した苦労も吹き飛んでしまった。

 

 

 

 そして、今日。

 

さわやかな天気、前日の充実感とはうって

 

変わって、秀夫の心は 憂鬱であった。この日のメインは、

 

ハイキング。片道約3kmではあるが、かなりの上りがある

 

ため、約2時間の道のりだ・・・。

 

 

 

 サッカー部に所属する秀夫は、足腰が強く、体力には自信

 

を持っている。稲武野外教育説明会のとき、先生が

 

「かなりきついぞ!」

 

と言われた。

 

 

 

 秀夫は、(ようし、がんばるぞ!

 

1時間ぐらいで登ってやる!)

 

と思ったほどである。ところが、

 

男女混合の班を作り、その班で、まとまって登ると知ると、

 

あまり やる気が、なくなってしまったのだった・・・。

 

 

 

 

 

名古屋市:野外教育(暮らしの情報)

 

 

 

 午前9時、いよいよハイキングの開始である。ハイキング実行委員や

 

先生からの注意が聞こえてくる。

 

 

 

「必ず、班でまとまって行動するように!」

 

 

 

「協力し合って、楽しくハイキングをしよう!」

 

 

 

そのとき、秀夫は心の中でつぶやいた。

 

 

 

「ちぇっ! どうして班で、行動しなくちゃいけないんだ?」

 

 

 

 時間差で、班ごとに、どんどん出発していく。

 

そして秀夫たちの出発時間となった。

 

 

 

 同じ班の久美や真由、そして修が、楽しそうに話しながら歩いている。

 

秀夫も、話に適当に相槌ちを打ちながら

 

歩いていた。

 

 

 

 木々の生い茂った山道は、だんだん険しさを増していった。

 

鼻歌まじりで歩いていた久美たちも、

 

口数がめっきり減り、荒い息遣いだけが聞こえてくる。

 

 

 

ねぇ、・・・ちょっと休まない?」

 

 

 

苦しそうな久美の様子を見て、真由がみんなに聞いた。

 

 

 

「おいおい。もう休憩かよ?

 

まだ15分も歩いてないぞ!」

 

 

 

 秀夫が怒った口調で冷たく言う。しかし、久美がその場に

 

座り込んでしまったため、休憩することになった。

 

 

 

(ちぇっ! 早く登りたいだぁ。これぐらい全然疲れてないのに・・・)

 

 

 

 心の中で思っていた秀夫の横を、「お先に!」と言って、

 

後ろの班が、通り過ぎて行った。

 

 

 

「おい! まだか?」

 

と、いら立つ秀夫に、

 

久美は、

 

「ごめん、ごめん。もういい、ありがとう」

 

といい、再び登り始めた・・・。

 

 

 

 4人は、黙々と上り続けた。20分、30分が経ち、

 

いっそう山道は険しくなってきた。体力に自信のあった秀夫でさえも、

 

息が乱れ、足が、思うように動かなくなってきた。そんな時、

 

「ごめん、ちょっと休ませて」

 

と、久美の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

子供と行く親子登山のすすめ。9歳と7歳の子供を連れて、山に行く:丹沢・南山 - .HYAKKEI[ドットヒャッケイ]

 

 

 

 

 久美の足取りは、おぼつかなく、ふらふらであった。しかし、秀夫は、

 

「またか? 久美のせいで、どれだけ時間がかかっていると思って

 

いるんだ!」ムキー

 

と、怒鳴ってしまった。あたりに静けさが漂う・・・。

 

 

 

久美は、小さな声で、

 

「ごめんね。じゃ先に行っていいよ。

 

先生には、私が、全然歩かないからって言っておいて」悲しい

 

と言ったきり、座り込んでしまった・・・。

 

 

 

ひどいよ! 秀夫さん。そんな言い方ないでしょう!?」びっくり

 

 

 

真由はそう言うと、久美の顔を心配そうに覗き込んだ。

 

 

 

「わかった。じゃあ、先に行くぞ」ムキー

 

 

 

そう言い残すと秀夫は、1人で登り始めようとした。秀夫を、修が

 

追いかけてきた。

 

 

 

「なあ、班行動しようぜ。久美さんだって本心で、あんなこと

 

言ったんじゃないってことぐらいわかるだろう?」プンプン

 

 

 

 しかし、秀夫の足は止まらなかった。

 

どんどん頂上へ向かって登り続けた。

 

前にいる班をどんどん抜き、

 

ひたすら登って言った。

 

 

 

 どれだけ 歩き続けただろうか? 

 

 

 

 さすがの秀夫も疲れを感じ始め、

 

少し休憩を取ることにした。その場に腰を

 

下ろした秀夫の荒い息の音だけが、静けさの中に響いている。

 

ふと、秀夫はトワリングの練習で、できた手のマメを見つめた。

 

そして、残してきた3人のことが、頭をよぎった・・・。

 

 

 

 

 

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「じゃあ、先に行っていいよ」と言った久美の顔。

 

 

 

「そんな言い方はない」と怒った真由の顔。

 

 

 

「班行動しよう」と追いかけてきた修の顔。

 

 

 

そして、昨日の飯盒炊さんのこと、

 

 

 

キャンプファイヤーのことを、

 

 

 

秀夫は思い起こしていた・・・。

 

 

 

 もう、秀夫には、頂上のこと、早くゴールにたどり着くことは

 

どうでも良くなっていた。

 

 

 

 どれぐらい経ったのだろう? 真由が久美の手を引き、修が久美の

 

荷物を持って登ってきた。秀夫が、木の切り株に腰を下ろして座っている

 

のを見つけると、

 

 

 

「秀夫さん、まだ こんなところにいたの?」

 

 

 

と、真由が驚いたように聞いた。

 

 

 

 秀夫は、どう言っていいか、返答に困った顔をした後、

 

黙って修から

 

久美の荷物を受け取り、肩に担いだ。

 

それを見た修が、

 

「さあ、もう少しだ! 頑張ろう!」

 

と声をかけた。

 

 

 

みんなの顔には、笑顔が戻っていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

備考:この内容は、

2015年

発行:○▲県教育振興会

編集:◎▼小中学校長会

「道徳 明るい人生 2年」

より紹介しました。