【意表を突く超音波メス】
最後に、炎でもレーザー光線でもない武器と
して、非常にインパクトの強かった、
怪鳥ギャオスの「超音波メス」について考えてみよう。
ギャオスが吐く超音波メスは、光線の威力では
なく、音波の威力を武器にした
ものだ。
超音波メスという医療機器は、まだ開発されて
いないが、超音波で物を
切断する事はできる。主に、金属や、セラミックスの
加工に使われる手法である。
だが、超音波だけで、物体を切断することは出来ない。
音は、質量の軽い空気分子
の運動なので、そんな力は持っていないのだ。
超音波を当てると、物体の分子
全体が振動する。このため、変形しにくい物体なら、
材質や形状によって共鳴を
起こして割れる事はあるが、切れてしまう
ことはない。
また、生物の体であれば、
じんわりと温まって血行が良くなる。
したがって、ギャオスのように、
ただ、口から超音波を発しても、何も切ること
はできない。窓ガラスが割れたり、
周囲の人間が健康になったりするだけの
ことである。
超音波で物を切る場合は、切断したい
部分に、金属や岩石の粉を置かねばなら
ない。粉が振動し、物体に何度も
ぶち当たる力によって、材料を部分的に破壊し、
切断するのである。
したがって、ギャオスが超音波メスを
有効に使おうと思ったら、格闘を一時、
中断し、地面の土をすくって、相手のガメラに
塗りつけ、そこを狙って撃たなければ
ならない。
敵の以外な行動に驚いて、
ガメラの動きが、一瞬止まってしまう効果も
期待できるだろう。
しかし、ガメラが土を払い落として
しまったらおしまいだ。
息を吸い込み、
口を開けたところで計画は頓挫し、こちらの
動きも止まってしまう。ギャオスの
必殺武器が、効くかどかは、実はガメラが
きれい好きかどうかに、かかっているので
ある・・・。
備考:この内容は、
2018-11-30
発行:(株)KADOKAWA
著者:柳田理科雄
「空想科学読本 1」
より紹介しました。