【着火に必要なのは根性だ】
こうして、石油を食うのなら、燃料については、
解決出来ることがわかった。
残る問題は、着火である。
着火の方法は、2つある。
火花や炎を近づけて 引火させる方法と、
燃料の温度を発火温度まで上げて、自然発火させる方法である。
生物が火花を出す方法として、最も簡単なのは、歯が火打ち石になっている
ことだろう。可燃性ガスを吐きながら、歯をカチカチ噛み合わせ、火花を出して
着火するのだ。
火打ち石には、水晶とよく似た、成分の岩石が使われる。
生体内で、作られることは
ないが、自然界の動物の中にも、鉱物を体の中に
取り入れて生命活動に使って
いるものはある。
たとえば、ニワトリは、砂や小石を「すなぎも」の中に
蓄えて消化に役立てている。発火のために歯の間に火打ち石を
仕込む生物がいたとしても、
不思議ではない。
AHO~!
ただし、唾液にまみれて濡れた火打ち石では、非常に火が付きにくいはずだ。
一発では、まず着火できず、火がつくまで、獅子舞の獅子のように、何度も
何度も虚空を噛むことになる。
なんとも落ち着きのない怪獣であることか!?
また、可燃性ガスは、ある一定の温度を
超えると、炎や火花がなくても発火する。
たとえば、メタンの自然発火温度は、
「537℃」だ。しかし、生体化学反応を仕切っている
のは酵素だが、酵素は熱に弱く、60℃以上
の温度では、煮えてしまって働らなくなる。
自然界の動物に、異常な高温を発する
ものがいないのは、このためだ。
しかし、科学的には無理だとしても、
物理的には高温を出すことは、可能では
ないだろうか?
つまり、肉体の一部を
すり合わせ、摩擦熱によって温度を
上げるのだ。
両手を合わせて、ごしごし
こすり合わせると、ある程度熱くなる。
これをどこまでも続けていって、自らヤケド
することはできないものか? 実際にやってみると、
十数秒で、疲れてしまうが、
それでも頑張って続ければ、出来そうな気もする。
最終的には、根性の問題かも
しれないが、強烈な根性を持った怪獣がいないとも限らない・・・。
怪獣が、歯をカチカチ噛み合わせたり、盛んに舌を動かしたり、激しく
歯ぎしりをしたり、祈るように手を擦り合わせたりし始めたら、
要注意である・・・。
びこう:この内容は、
2018-11-30
はっこう:(株)KADOKAWA
ちょしゃ:柳田理科雄
「空想科学読本 1」
より紹介しました。