ノーラン版との比較も楽しめるが、フィンチャー
の『セブン』に近いテイストの新バットマン
「THE BATMAN ~ザ・バットマン~」
映画ライター 斉藤博昭
クリストファー・ノーランが、ひとつの
完成形を作った「闇の騎士」=ダークナイトが、
どんな進化をとげるのか? 作品全体のシリアス&
ダークなテイストなど、その”比較”も、本作の
楽しさだ。
上映時間が3時間近くなるので、
どこまで物語が広がるのか、身構えると、
本筋を、しっかり突き進むので、作品の流れに
ゆったり、身をゆだねる感覚。
声を上げたくなる
ショック描写、正体不明の悪役リドラーの
仕掛ける連続○人と、それを捜査するバットマン
とゴードンという構図で、もっとも近いテイスト
は、フィンチャーの『セブン』ではないか?
ロバート・パティンソンのブルース・ウェイン
は、過去のバットマン俳優と異なり、極端
なまでに、憂いと悲哀をにじませ、ぶしょう髭も
隠さない外見で、作品全体に、狂おしさと、
悩ましい美しさを加味。
そう考えると、ポール・ダノの
リドラーは、やや、物足りないが、キャット・
ウーマンにセクシュアリティの曖昧さが、
込められたり、いかにも、今っぽい味付けが、
想像力を広げる。
『ダークナイト』とシンクロする
ラストは、主人公が背負う十字架の重さと、
その切なさで、深い余韻に包まれた・・・。
備考:この内容は、
令和4-3-21
発行:(株)近代映画社
「SCREEN 2022-5月号」
より紹介しました。