深夜のコンビニは、若者たちの図書館になっている。
週刊誌からマンガ、文庫本
まで、もう読み放題だ・・・。
金を払って読むのが、アホらしいのだろう。
そのとき、ヒロシは、
夏の恐怖怪談を集めた文庫を、読んでいた。
ショート、ショートのコワ~イ話なので、
適当なところで読み終え、
続きは、また明日にしてきた。
半分ほど読んだ。
3日目。
まるで、自分のことを書いてあるような、コンビニの
怪談話が、出てきた。
えっ!?
ヒロシは思わず、ゴクリと、生唾を飲み込んだ。
そう書いてあると、つい、自分も、
つばを、飲み込んでしまう。
クーラーが効いて、店内は快適な、はずだが、
背中に人の気配がして、生あたた
かい風が、「ふ~っ」と、吹いて来るようだ。
さっと、振り向いてみるが、
誰もいない。
ヒロシも振り返っていた。
気のせいだろう。
いや、この本のせいなのかもしれない。
乾いた唇を、なめた。
だって、
本に、そう書いてあるのだ。
無意識に、その通りに
している自分。
このまま、読み続けるのが、
怖くなってきた・・・。
といって、結末を読まない
のも、すっきりしない。
その時である。活字の間から、拷問にあったような、
うめき声、ささやき声が聞こえる。
はっきりと、聞き取れない。
本が、しゃべるわけはないと、思いつつ、
本に、耳を当ててみた。
「かえ、かえ、かってよめ・・・」
「立ち読みしないで、買って読め!」
本の間から、ミイラのような細さの腕が伸びて、
ヒロシの髪を、かきむしった。
ヒロシは、真っ青な顔をして、
本を持って、レジに走った・・・。
備考:この内容は、
1995-8-5
発行:KKベストセラーズ
「子供の読めない童話」
より紹介しました。
ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ・・・!