数年前『グーグーだって猫である』という』映画がありました。
大好きな大島弓子さんが、猫との暮らしを綴ったエッセイ漫画を、
原作にした作品でした。子供の頃から、一番好きな作家である
憧れの大島さんを、演じられること。そして、可愛い猫たちとの共演
に、心踊る日々でした。
その映画のプロモーションが
始まった頃、レタスクラブさんから、
短期連載で、猫の話を書きませんか?
と、ご提案頂きました。
1本の映画を作り終えると、関わった
者たちは、みんな同じ思いを抱きます。
「1人でも多くの方にこの
映画を観て頂きたい」。
だから、監督も、役者も、スタッフも惜しみなく
プロモーションに励みます。
そんな、映画愛から、軽い気持ち
で、始まった連載でした。
猫からの目線で、私を観察するという
アイデアも、レタスクラブさんからでした。
書き始めてみると、
その、逆観察は、思いのほか楽しくて、気がついたら2年とちょっと
の長期連載に育ってしまいました。
映画愛は、いつからか、猫愛に、
いやいや「小雨愛」に変わってしまっていたのです。
私にとっての小雨は、まるで、気高く、孤高な百獣の王。圧倒的
な存在感で、従順な、しもべである私を、完全に支配しています。
そんな、彼女の視線を感じるから、1人暮らしの、私の生活に少しの
秩序が生まれます。
そんな、彼女の体温を感じるから、私の日々
に、ささやかな幸福が訪れます。
小雨は、私との暮らしを、どう
感じているのだろう?
こんな風だったらうれしいなぁ、という私の
願望が、「小雨日記」に詰まっています・・・。
小泉今日子