復讐に生きる女。ドラマ「ギルティ
悪魔と契約した女」での菅野美穂が
演じ女性だ。作品ごとに驚くほど
違う顔を見せてくれる。彼女にとって
演じるとは・・・語ってもらいました。
「今の、自分にできることを、
一種懸命やりながら、
芽衣子を演んじて行きたい」
【役づくりは楽しみ続けるための、準備体操なんです】
役者は大きく分けて、2つのタイプ
に別れる。事前にあまり役づくりせずに
現場で抱いた感情に重きを置く
タイプ、そして、徹底的な役づくりをして撮影
に臨むタイプ。菅野美穂はどちらかというと、
後者のタイプに当てはまる。
「現場で、ニュアンスを極めるという、
一方向の演技を深く追求する俳優さんは、
本当にストイックな方だと思うんです。
ニュアンスって、繊細に変わるから、リハー
サルで、うまくやれても、本番では、ダメに
なることもある。それに、人間だから、
一方向に絞って追い続けることに飽きを
感んじることも出てきてしまうと、思うんです
よ。そういうこともあって、私は、ちょっと
違う考え方なんですね。私は、せっかく
だから、自分が飽きずに楽しみ続けて
いけるようにしたい。そのための準備体操
として、事前に役づくりをしっかりやる
ようにしているんです。」
現在出演中のドラマ「ギルティ悪魔
と契約した女」では、トリマーとしての
優しい顔と、無実である自分を○人犯に
仕立て上げた者たちに、次々と復習して
いく悪女の顔という両極端の2面性を持つ
女性・野上芽衣子を演じている彼女。
今回も、その役づくりが、徹底的に行われた・・・。
「復習に燃える芽衣子の心情や、その
決意にいたるまでの感情の流れは、実体験の
無い私には、なかなか共感も実感もできな
いじゃないですか? そこは、想像で埋める
しかないので、スタッフさんから頂いた
資料に目を通したり、インターネットで
裁判の事例を調べて読んだり、裁判
を扱うニュースを見て、その裏にあることも
想像していったんです・・・。
その結果、芽衣子が復習と
いう目的がないと、自分自身を
保っていられないような、精神状態だった
ことが見えてきて、・・・。その一方で、それ
ほど大きな、憎しみを持った人だからこそ、
動物にプラスの愛情を、注ぐことがなけれ
ば、バランンスが崩れて、息ができないよう
な人生だったのかな?って。今回は、最後の
結末までのディティールを、私自身、知らない
状態なので、演技を組み立てる上で
難しい部分もあるんですけど、そういう
環境の中、自分にできることを、一生懸命で
きたらいいな、と思っているんです・・・」。
面白いから、一生懸命やるんじゃなくて、
一生懸命やるから、面白くなっていく・・・
それが、菅野美穂の考え方だ。
「今回も、トリマーさんに、技術を教わった
んですけど、普通に暮らしてたら、きっと
興味を持たなかったことだと思うんです。
でも、役づくりを通して、そういう新しい
世界を覗くことで、興味が湧いてきて、
とても新鮮で、楽しい気持ちになれるんです・・・」。
【幸せも不幸もあるから、人生は色鮮やかになる!】
彼女と話していると、一生懸命という
言葉が何度も出てくいる。役づくりしかり、
彼女は、周囲から、求められるものよりも、
一段ハードルを上げて、何事にもチャレンジ
しようとしているような気がする。
「気力があるうちは、そうしたいなって
思うんですよ。20代の前半に読んだ本に
【一度失ったハングリー精神は、二度と
と戻せない。あとは、一生失くしてない
フリを演じて生きていくだけだ】という一文
があって、”わかる気がする”、と、思った
と同時に、”やばいかも?”って思ったんです。
それで。”一生懸命やらなきゃ”と・・・。
そう思ってはいても、やっぱり30代になって、
経験が増えると、どっしりと構えられる
ようになった反面、どこかハングリー
精神や、情熱みたいなものが、薄れてきて
しまうんですね。そんな中、つい先日、
アップルコンピューターのCEOスティーブ・
ジョブズ氏が『Stay hungry stay foolish』と言った
ことを知ったんですよ。改めて”芝居バカ、
芝居腹すかしで、い続けることが大切だ、
って思ったところなんです・・・」。
しかし、「ただ、演技だけ頑張っていれば
いいということでもlない」と付け加える。
「演技をするには、いろんな感情を
知っていたほうがいいと思うんです。自分の中
の受け皿が大きいほうが、表に出していく
ものをたくさん乗せられるような、気が
するんですよね。だから、イヤだなって
思うようなマイナスの感情も、いろいろ
知られるような人生を送りたい、ハッピー
とアンハッピーの両方があるからこそ、
人生は色鮮やかに、なるんだと思いますね。
だから、好奇心を持っていろんな
ことを経験して生きたいんです・・・」。
彼女には、つまづきも恐怖もない。
「ピンチはチャンス。つまづいて、その
まま起き上がったら、ただ、”膝が痛い”
だけで終わるけど、何かを掴ん起き上が
れば、”新しいものを拾った”ことになる。
つまづきのない人生なんてないし、
考え方ひとつで、意味合いが、大きく変わって
くると思うんですよ。だから、今は先が
どうなってもいいんです。そういう意味では、
今の私は、精神的にすごく、落ち着いて
いる時期なのかも知れません・・・。
備考:この内容は、平成23-1-24 発行
「月間デジタルTVガイド 2011年1月号」
本体362円+税
より紹介しました・・・。