【過去の映画における無重力の表現】
宇宙における無重力に取り組んだ最初の作品として、『月世界征服』が挙げられる。
この映画では、磁力式の靴によって、宇宙船の壁面を歩ける設定になっている。船外修理をする
シーンでは、宇宙船のセットを回転させながら、カメラを上下逆にすることで、足を上に
して、円筒形の船体上を、歩いているように見せている。また磁力靴が剥がれて宇宙
空間に、漂い出てしまうシーンがあるが、この場面のアップショットは吊り(ワイヤー
ワーク)、ロングショットは、人形アニメで表現されている。
宇宙描写のリアリティーを一気に高めたのが、『2001年宇宙の旅』
である。この作品の無重力描写は、基本的には吊りだが、木星探査船
ディスカバリー号の内部は、直径約12mの円筒形セットを、実際に回転させて
いる。ここで、ジョギングをしているケア・デュリアは、常に回転セットの
底にいるが、観覧車のような仕掛けのカメラで撮影することで、まる
で、遠心力によって、人工重力が発生しているかのように見える。
この場面は、ミュージカル『恋愛準決勝戦』において、フレッド・
アステアが、壁や天井で踊る仕掛けがヒントになっており、この
回転式セットのトリックは、その後も、数多くのホラーやSF映画に
用いられた・・・。
近年では、『インセプション』に、夢の中のホテルが無重力である
場面が登場する。これは、回転式セットのほかに、ワイヤーで吊った
俳優、ダミー人形、CGによる血液の滴などを組み合わせ、膨大な
デジタル修正を行って不可思議な空間を表現したものだ・・・。
ここまでの作品は、あくまでも、擬似的な表現に過ぎなかったが、
『アポロ13』では、本物の無重力での、撮影が試みられた。これは、実際にNASAが
訓練に用いる航空機KC-135の内部にアポロ船内のセットを作り、下向き45度
で自由落下させ、最大22秒間程度、0.01gの微小重力状態を作り出す方法だった・・・。
備考:この内容は、2013-12-13 発行、
「GRAVITY 映画パンフレット」
定価800円
より紹介しました・・・。