「エスプリ APM-8 1,000,000円」
【平面ユニットは、最新技術のあらわれなのか?】
振動板を平面にするということは理論的に言うと、いくつかの
メリットがあるのです。ひとつは、振動板の振動モードの
解析が、平面以外の形、たとえば凹面、凸面、その他の形に
比べて、解析が比較的容易であること。もうひとつは、平面
振動板に直接ボイスコイルが付くということは、ボイスコイル
の位置を、ウーファー、ミッドレンジ、トゥーターと、
そろえやすい。そういう意味で、数年前から、問題にされている
スピーカーの位相特性をコントロールするという点でもやり
やすい。
ただし、平面振動板の中にも2種類ありまして、平面の
振動板に、じかにボイスコイルが付いているのと、平面の裏側に
もうひとつ円錐形があって、その中に発泡剤などが充填され
ていて、外からは平面だけれども、ボイスコイルの位置は
ずっと奥に下がっている、という2つの種類があります。
その限りでは、必ずしも、いまの話は、当てはまらないということが
あります・・・。
「テクニクス SB-3 32,000円」
もう1つ、補足すれば、いま言った平面と円錐の混合型で、
中に発泡剤が充填してあるというようなものは、振動板の
強度を上げるということで非常に有効で、振動板自身が勝手
なモードでウインドウすることがなく、ボイスコイルの振動板が、即
面の振動板に性格に伝わってくるということです。つまり、
理論的に言うと、平面というのは、なかなかいい面を持っている
わけです。
しかし一方、メーカーが発表したがらないウィークポイント
が、当然いくつかあります。物というのは、ある部分をよくして
行こうとすると、必ず反面には、デメリットが生ずる。これは
もう大原則なのです。ところが、つねに新しい製品が華々しく
登場する時には、デメリットは、隠されて登場してくるもの
だから、ついメリットのほうが拡大宣伝されるのです。
いずれにしても、平面振動板に取り組んだということは、
従来の円錐型あるいはドーム型、その他のユニット自体の性能
向上に設計者自身がひとつの限界を見て、知って、さらにそれ
以上の性能に挑もうという、そういう果敢な開拓精神の
あらわれだと解釈できると思うのです。それが、たまたま、去年あたり
から、非常に目立ってきたということだろうと思うのです。
「ビクター Zero 7 120,000円」
ある海外スピーカー・メーカーで、相当、いいスピーカー
つくっているメーカーの大変著名なエンジニアがうまいこと
を言っています。「今日まで、われわれが完成してきた
コーン型、あるいはドーム型のユニットをそのまま使ってでも、従来
まだ十分解析のできてなかったネットワークの、電気的ある
いはさらにもっと音響的な、音響心理まで含めた、深い解析
を加えること。それから、エンクロージャーの形とか、その
アッセンブリーの方法とか、そういうことをさらに深く追求
することによって、いままでよりも、はるかに、いいスピーカー
・システムをつくることが現に可能である。われわれはそう
やってスピーカーをつくっている」と。そういうことをはっきり
と、言っています。実際、役のつくったスピーカー・システムとは
大変いい音を聞かせてくれるという例があるわけです・・・。
備考:この内容は、昭和55-7-31
発行:音楽之友社
編集発行人:浅香淳
「習慣FM別冊・オーディオ基礎知識
使い方・選び方テクニック大研究」
定価:580円
より紹介しました・・・。