闇... | Q太郎のブログ

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さかのぼっても読んでみてね♥♥

「ゴースト」

 

 幽霊が困っている、という話しをよく聞く。出没場所の環境劣化に悩んでいるというのだ。劣化

にもいろいろあるが、最大は、光害だそうだ。この夜から闇がだんだん消えていく。これは幽霊

の「●活」問題である。

 

 

 

 専門家からの指摘もある。〈私たち現代人は膨大なエネルギーを用いることによって、広大な

 

光の領域を人工的に獲得し闇の領域の縮小を実現したのである。〉(小松和彦『妖怪岳新書』

小学館)。この著書は、妖怪たちの〈存亡の危機〉という表現を使う。ちなみに、著者のいう妖怪

は、幽霊、化け物を含んでいる。

 

「シックス・センス」

 

 当たり前のことだが、かつては夜は暗かった。暗闇で草木はざわめき、獣たちがうごめいた。

昼とは違う異界を作った。戸外だけではない。室内も明るくはなかった。行灯やロウソクの

あかりは、微妙な陰影を生み出した。そして、幽霊にとってはむしろ、この室内が出没地

 

としては好適だった。

 

「リング」

 

 いまは昔の話である。小松氏は、光害のほかに、「開発」を妖怪危機の原因にあげる。田園や

森林が〈どんどん開発されて、工場や住宅地になり、妖怪空間は人間の住む空間、人間の支配

する空間に変貌していった。奥行きのない均一的な空間になって、異界との境界がぼやけて

しまったのだ〉。

 

「JUJU Sign MVより」

 

 こうして、妖怪たちは困った。担当の役所もはっきりしない。保護組織にも今の所あま

り力はない。となると頼みは、子どもたちだ。彼らの想像力とクチコミで延命を図ろうとする。

出没場所は夜の学校だ。この数年の『学校の階段』ブームには、たぶんそんな背景があった。

 

ただ子どもたちは飽きっぽいから、いつまで「学校の階段」でしのげるかはわからない。

 

 幽霊の身になってみると、私達があまりに闇を疎んじて来たのがわかる。せめてお盆ん

ひととき、灯りを消し闇に身を置いてみようか・・・。

 

備考:この内容は、1997-4-15 朝日新聞論説

委員室著「天声人語」より紹介しました・・・。