「土に埋もれてもがき●に」
第3の問題。残土である。地面を掘ると当然土が出る。砕かれて空気が入る
ため、体積は掘る前の2倍から3倍になる。地底戦車がこれをどう処理している
のかも、大きな問題である。
モグラなどの地中動物は、もともと柔らかい土を押し広げながら進むため。
残土は問題にならない。また、トンネル掘削や地下鉄工事では、掘る機械そのもの
よりもずっと大きな空間を作ったり、パイプ状になった機械の内部に土砂を
落とし込んだりして、出た土を次から次へと地上に運び出すのである。
これに対して、地底戦車は、車体がギリギリ通れる穴を単独で掘って行くのだ。
ドリルが掘り崩した土を車体の後方へ送るシステムが不可欠だが、それでも2倍
から3倍に膨れ上がった土を置く場所は、
どこにもない。数m進んだところで、
前にも後ろにも進めずもがき●にである。
これを避けるためには、後援部隊を
組織して、ベルトコンベアーなどを使って
土を地上に送り出さなければならない。
こうなるともう、戦略行動というより、
土木工事だ。正義の組織よりも、土建会社に
任せたほうがよかろう。
しかし、おそらく火山の噴火口に匹敵
するような熱さ、想像を絶する大騒音の
中での工事になる。人間はまず働け
まい。ロボットを使うにしても、金属部品
では熱に耐えられない。電気系統まで
耐熱セラミックスでできたロボット軍団を
量産し、これをこき使うことになる。
いずれにしても、地底怪獣1匹倒すのにえらい騒ぎである。唯一の救いは、
大土木工事による経済波及効果が期待できるということか・・・。
備考:この内容は、2016-12-2 (株)KADOKAWA 柳田理科雄著
「どっちがすごい!?空想科学読本」より紹介しました・・・。